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上級国民WASPとは何か?ヒラリーさんとブッシュ氏 ケネディ家の差

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過去記事「なぜアメリカの真似をする国は失敗するのか?理由は2種類の白人たち」において、アメリカの旧移民と新移民の違いについてとりあげました。

旧移民:ゴールドラッシュ前の移民
宗教や愛国心が移民理由のためヨーロッパ寄りで保守的

~アメリカ独立後、半世紀ほどヨーロッパからの移民がほぼ途絶える~

新移民:ゴールドラッシュ後の移民
アメリカンドリームが移民理由のため利益重視で野心的

 

現在のアメリカ白人はこれら2種の移民の子孫であり、それぞれの出身家系の価値観の影響を受けています。

 

アメリカの支配層とよばれたWASP

WASP(ワスプ)とは「ホワイト(白人)・アングロ-サクソン・プロテスタント」の略語です。要はプロテスタント教徒のイギリス系アメリカ人ということですね。
アメリカの支配層の特徴を表すとされた言葉です。

今より人種差別意識の強かった1980年代頃までは日本でも「アメリカではWASPでないと高い地位につけない」などと噂されていました。今どきの言葉でいえば「アメリカの上級国民」といったところですね。
人種差別にこだわりがちな日本人からすると、白人の地位の高さを印象づける言葉でした。

 

しかし実際のところ、支配層の立場にいたのはイギリス系の中でも、旧移民の家系です。

アメリカ独立前に移民した旧移民は、領土拡張を望む王室派(ロイヤリスト)や信教の自由を求めたピューリタンなどのイギリス人、そして宗教改革の中心地だったドイツ界隈の出身者が多数を占めました。
独立後は当然、彼らの家系が国の中枢に近い位置になりました。エリート支配層を指すWASPとは、このグループに属し、縁故や利権を相続、保持してきた人たちのことなのです。

白人でイギリス系でプロテスタントならば、誰でも他より良い地位にいられたというわけではないのです。

 

このWASPという言葉を考える上で、興味深いのが、ヒラリーさんとブッシュ氏の家系です。

 

WASPだけどWASPじゃないヒラリーさん

クリントン夫人ヒラリーさんは、イギリス系で白人でプロテスタント(メソジスト派)出身です。WASPの条件すべてにあてはまります。

しかし彼女の祖父が移民した時期はゴールドラッシュ以降です。イギリスから渡米して炭鉱夫をしていた人物でした。

なのでヒラリーさんはWASPの条件にあてはまるものの、WASPらしい旧移民ではありません。新移民なのです。

社会的地位は、他ヨーロッパからの経済目的の移民と同じく、庶民です。

過去記事「ヒラリー・クリントンの"恥"と呼ばれる二人の弟が結構とんでもなかった」で取り上げたヒラリーさんの弟たちの、大統領の義弟と思えない欲深い行動を知ると、ちょっと考えさせられますね。

クリントン家はディープステートの仲間だといわれています。そうだとしても、彼女らは庶民出身なのでバイデン氏などと同じく下っ端の方です。
中枢にいるのはブッシュ家のような本物のWASPです。
(関連記事:「ディープステートの未来は暗い?独断で書いてみる」)

 

真の上級国民WASP ブッシュ家

一方、典型的なWASPの家系が、旧移民の出身のブッシュ家です。

ブッシュ家は古くからアメリカに根付いた聖公会の家系です。曽祖父は聖公会の牧師をしていました。

前記事「アメリカ人がどの社会階層なのか、ざっくり知る方法 富裕層の傾向は?」でとりあげたとおり、聖公会は現在でもアメリカのキリスト教宗派の中で最も高所得者の多いところです。
(関連記事:「聖公会 そして日本人と交わらないアメリカ上流階級の正体」)
※息子ブッシュは現在、メソジスト派に改宗しています。

ブッシュ氏は親子でアメリカ大統領になりましたね。しかも二人とも、再選され、満期までつとめています。
ブッシュ親子は他大統領より比較的、地味にみえる存在です。日本人の中には「それほど長く大統領を務めるほどの人物だろうか?」と思う方も多いかもしれません。
しかし、アメリカの歴史から考えれば、ありだったのでしょう。

また父親ブッシュはレーガン大統領の時代にも、副大統領の地位にいましたね。

ブッシュ家は今も、アメリカでは名家として扱われています。

 

英語版wikiにある、歴代アメリカ大統領の宗派をみると、歴代大統領の1/4を占めるといわれる聖公会(Episcopalian)、そして長老派(Presbyterian)の多さが目につきます。

長老派は宗教改革で生まれたカルヴァン派をルーツに持ち、聖公会同様、古くからアメリカに根付いているプロテスタント宗派です。分岐、変化の多い宗派ですが、前記事の所得調査でも聖公会に次ぐ高収入グループにありますね。
(関連記事:「金正恩の一族が実は信者?!キリスト教と北朝鮮とアメリカ」)

 

たった一人の大統領も暗殺されるカトリック

一方、同じキリスト教でも、それと対照的なのがカトリックです。
カトリック出身で大統領になった人物は、後にも先にも、ケネディ氏だけです。
そのケネディ氏すら、任期を全うできず暗殺されてしまいました。

近年、ケネディ氏を暗殺したのは実はCIAだったという説が有力になってきていますね。
BBCはCIAのことを、内部にWASPが多い政府機関であると報じています。植民地時代からアメリカを支配してきたWASPからみて、ケネディ氏は邪魔な大統領だったということでしょう。
(関連記事:「上流階級WASPが行く学校 アメリカ聖公会の教育方法」)

プロテスタントたちが国を拓いたアメリカにおいて、カトリック教徒は大多数が、経済的な理由でアメリカに来た新移民の子孫です。

前記事「アメリカ人がどの社会階層なのか、ざっくり知る方法 富裕層の傾向は?」に載せたアメリカの所得調査結果からしても、カトリックはあまり収入の高い層ではありませんね。

 

ケネディへの好感度に日本衰退の理由がある?

キャロライン・ケネディさんが日本大使になったとき、テレビ番組で、アメリカに詳しいとされるコメンテーターの知識人が
「ケネディ家はアメリカにおける天皇家のようなもの」といった発言をしたのを見て、驚かされたことがあります。

たしかにカトリック教徒の間だけなら、そうかもしれない。でも、アメリカ全体にしてみれば、全然違います。
聖公会に多いような本当の上流からみれば、天皇家どころか、むしろ逆でしょう。

ケネディ氏が人気を集めたのは、人口の多さのわりに日陰の位置にいたカトリック教徒、そして新移民たちに希望を与えたからでしょう。
オバマ氏が黒人の間で人気を集めたのと、同じような理由でしょうか・・・

アメリカ通の知識人としてテレビ出演するような日本人が「ケネディ家≒天皇家」と発言し、それに対して多くの日本人が疑問を持たない・・・

この件は、戦後の日本人が好んで関わってきたアメリカ白人の多くが、アメリカ社会のどこに属する人たちなのかを、垣間見せているかもしれません。

 

日本において、特に1940-60年代生まれを中心とした戦後世代は、先進国アメリカ、そして白人への憧れが強い傾向ですね。

彼らは、アメリカ人から多くを学び、同じような価値観を身につけることを良しとしてきました。渡米できるような金銭的余裕のある者ほど、そうでした。

しかし彼らがリードするようになってからの日本は、なぜか衰退し、富から遠ざかっています。先進国アメリカに近づこうと努めてきたのに、逆に先進国から脱落しそうです。
(関連記事:「経済大国を作った戦前世代、失われた20年の戦後世代」)

その理由の答えは、もしかしたら、ここにあったのかもしれません。

わたしたち日本人だって、属する社会階層によって、富に対する姿勢や哲学は、まるで違いますからね。成り上がりの家は富を手にしても、往々にして富を維持する知恵がありません。

※外部リンク「入会は極めて困難、最も排他的な9つの大学秘密社交クラブ」
アメリカの古い家系の上流階級についての興味深い記事です。

 
2021年5月追記:バイデン氏はアメリカ史上2人目のカトリック大統領になりました。その件についてピュー・リサーチ・センターは「Most Democrats and Republicans Know Biden Is Catholic, but They Differ Sharply About How Religious He Is」という記事を出しています。就任早々から、こうした調査が行われるほど、アメリカにおいて大統領の信仰というのは重視されるんですね。
 
https://en.wikipedia.org/wiki/Hugh_Rodham_(born_1911)
https://en.wikipedia.org/wiki/Samuel_P._Bush
https://en.wikipedia.org/wiki/Religious_affiliations_of_Presidents_of_the_United_States

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