日本の伝統に思うこと

「さくら」も「うさぎ」も歌えない現代の日本の子供たち

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アンジェラ・アキさんの「卒業」やSMAPの「世界にひとつだけの花」が学校唱歌になっていることは、広く知られていることと思います。私の周囲の子供たちも、これらの歌をすべて覚えていて暗唱できます。

 

けれど、こうしたポップスを公立学校が教えている裏で、昔ながらの日本唱歌の教育がカットされていることは、あまり知られていません。

 

「さくら」を知らない今どきの子どもたち

衝撃だったのは私が「うさぎ」を歌ったときのことです。
「うさぎ、うさぎ、何見て跳ねる 十五夜お月さん見て跳ねる」
昭和世代なら多くの方がご存知でしょう。

しかし私の周囲の子供たちは
「何その歌?」「知らない、初めて聞いた」

――すでに、小学校高学年の子供たちの話です。

この非常に短い歌詞の歌、調べてみると明治時代からの文部省唱歌だったそうです。

子どもたちは「さくら」も知らないという。森山直太朗さんの歌じゃないですよ。
「さくら さくら 弥生の空は 見渡す限り~」
この曲は作者不詳の日本古謡。幕末に江戸で子供用の箏(そう/こと)の手ほどきのために作曲されたといわれています。日本で長い間、引き継がれてきた曲だったんですね。

とはいえ、私も全部歌えるかというと、あやしいですけど。
幼い頃に習って以来、歌う機会もなかなかありませんしね。

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子どもたち、「かごめ かごめ」や「花いちもんめ」は知ってるんです。
でも「靴が鳴る」は、やっぱり知らない。
「おてて、つないで、野道を行けば みんな かわいい うさぎになって」・・・こんな歌ですね。
そして「どんぐりころころ」は知ってても、たぬきが出てくる「しょじょじの庭」は知りません。

 

ミュージシャンの才能と伝統音楽の関連性

今時の中高生の親世代である1960~1970年代生まれの人たちからは
B'zやスピッツ、グレイ、ミスチルなど、今も音楽業界の第一線にいる人たちが多く出ています。

けれど、彼らがいつまでも一線扱いということは、つまり若い世代で大御所になれそうなミュージシャンがあまり出てきていないということでしょう。

 

上に挙げた大御所ミュージシャンらがまだ幼かった昭和50年代頃まで、日本のテレビやラジオで流れる歌謡曲は演歌や民謡が多かったです。そして、学校では戦前から続く伝統的なメロディを教えていました。現在、アラフォー以上の年齢の方の多くは、往年の演歌や民謡の有名曲を口ずさめるでしょう。たとえ全く好きでなかったとしても。

この世代は、そうした下地のある上で、かっこいい洋楽を聞いて、洋楽の影響を受けた独自の日本ポップスを生み出してきたわけです。

 

しかし近年の日本の若い世代は、その下地が乏しいです。上に書いたように教育機関が教えなくなっただけでなく、テレビでもあまり聞く機会がありません。

 

現在、50代~60代の人たちは、演歌などに認められる伝統音楽のメロディをあまり好まない人が多いです。還暦近くなってもサザンオールスターズが大好き、なんて人が多い。彼らより若い世代はさらに日本の伝統音楽を知りません。そして、テレビも、そうした視聴者らが好む今風の曲を多く使用します。

 

今の若い世代が育つ過程の中で、伝統音楽を暗唱できるほど身に叩き込める機会は、非常に少なくなっていると言っていいでしょう。

 

彼ら若い世代が感性を育てるべき年齢に聞いてきたろう音楽の幅のなさと、ミュージシャンとして才能ある人材が上世代と比べて乏しいこと。果たして無関係でしょうか?
日本で大御所扱いされてるミュージシャンの中で、最も若い宇多田ヒカルさんの母親は演歌歌手ですね。両親とも演歌歌手だった森進一さんの長男もまた、若い世代には珍しく大成功をおさめています。これらは果たして、偶然でしょうか?

 

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