所属する宗派で社会的地位がわかる?
江戸時代まで、日本はほとんどの国民が仏教徒でしたね。皇室すらそうでした。
現代の日本人も歴史の授業で、平安~室町にかけて日本に多くの宗派が生まれたことを学んでます。
こうした宗派、実は信徒の社会的地位と関連があることを、ご存知でしょうか?
たとえば武士なら禅宗、商人なら日蓮宗の信徒が多い傾向でした。農民は浄土宗が多く、皇室は真言宗でした。
もちろん個人の考えで改宗する場合もあったため、完全とはいえません。地域差もあります。それでも現在でも、その家がどの宗派かによって、先祖がどういう立場にあったか、ざっくり推察することができると考えられています。
とはいえ、日本の場合、明治維新、そして敗戦という大きな社会変動がありました。そのため、先祖がどのようであったとしても、現在、ほとんど意味をなさないものになっています。
・・・実はアメリカにも、こうした社会階層ごとの宗派の傾向というものがあるのです。
しかもアメリカでは、日本とちがって、大きな社会変動がありませんでした。そのため現在も宗派と社会的地位が比較的、連動している傾向なのです。
宗派でみるアメリカの社会格差
以下は2014年にアメリカの大手調査機関ピュー・リサーチ・センターが行ったアメリカの宗派ごとの世帯収入の統計からキリスト教を中心に抜粋したものです。
合計が100%にならない宗派もありますが、原本のままです。
10万ドルは日本円で一千万円強、3万ドルは300万円強です。
日本で検索できた宗派は日本語にしていますが
「church of god in christ」「National baptist convention」は見つけられなかったので、そのまま英語で載せています。
この2つは黒人信徒の割合が高い宗派です。
アメリカではこんなふうに、教会も人種によって分かれている傾向です。
長老派とアメリカ長老派は、もとは1つだったものが、過去に分裂して2つになった結果です。
「参考」としてあげた「正教会」とは、東欧圏に多いギリシャ正教会のことです。冷戦終結後、東側の知的労働者が多くアメリカに移民したためか、高めの結果になっています、
とはいえ宗教に熱心なアメリカでは個人の考えでの改宗も多いです。この表でわかる傾向は、あくまでざっくりです。
しかし、大手調査機関がこうした発表をするということは、アメリカ国内も宗派と社会階層の連動の傾向を事実として捉えているということでしょう。
・・・さて、この表をみると「聖公会」の高さが目立ちますね。
日本人にとっては、あまりなじみのない宗派かもしれません。
高所得グループ 聖公会とは?
聖公会(Episcopal Church)とはイギリス国教会から生まれた宗派を指します。
かつてイギリスが広大な植民地を支配したため、聖公会と称する団体は世界に他にもあります。
しかし、アメリカの聖公会は中でも特別です。もともと植民地にあったイギリス国教会が、アメリカ独立時に聖公会に変わったという、古い宗派なのです
簡単な特徴としては
- ゴールドラッシュ前に移民した古い家系に多い
- 歴代大統領の1/4は聖公会の出身
- 最高裁判事の1/3は聖公会の出身
- 高学歴の割合がアメリカのキリスト教宗派で最も高い
- 信者の9割は白人
2014年のピューリサーチセンターの調査によると、アメリカの成人人口の1.2%が聖公会の信者です。
一方、ユダヤ系は2.2%です。あわせて3.4%です。
2013年のnewsweekの記事によると、アメリカでは上位10%の世帯の所得が総所得の50.4%を占めるとあります。
この上位10%の内訳がどんなものか、なんだか想像できそうです。
日本人も知っている聖公会の著名人というと、J.Pモルガン、ヘンリー・フォード、あと大統領を二名だしたブッシュ家もそうです。2018年に亡くなったジョン・マケイン氏も晩年に改宗するまでは聖公会でした。ちなみに数学者のジョン・ナッシュもです。
(聖公会について、より詳しく→関連記事「聖公会 そして日本人と交わらないアメリカ上流階級の正体」)
アメリカを支配してきたのはユダヤではない
アメリカにおいて、聖公会に多くあるようなゴールドラッシュ前に移民した古い家系は、著名な名家にみられることが多いです。
たとえばロックフェラー家は日本ではユダヤ系だという間違った情報が定着していますね。ヨーロッパを基盤とする本物のユダヤ系、ロスチャイルド家と混同して伝えられたともいわれていますが。
実際のアメリカのロックフェラーは聖公会ではありませんが、やはりキリスト教の古い家系の富豪です。
(関連記事:「ユダヤじゃない!父は犯罪者?知られざるロックフェラー家の実像」)
日本では昭和に出版された本などの影響か、ユダヤ系が過大評価されがちなところがあります。しかし、ユダヤ系というのは実際は、白人系の国になら先進国に限らず広く存在します。アジアにおける華僑のようなもので、彼ら自身に国家を繁栄させる力は、あまりありません。むしろ、ここ10年ぐらいこそが、ユダヤ系がアメリカの歴史で最も力を持ったときかもしれません。
(関連記事:「「児童買春の島」大富豪エプスタインの生い立ち ユダヤ系アメリカ人の現実」)
http://www.pewresearch.org/fact-tank/2016/10/11/how-income-varies-among-u-s-religious-groups/
http://www.adherents.com/adh_sc.html
https://www.pewforum.org/2013/10/01/chapter-1-population-estimates/
https://en.wikipedia.org/wiki/Episcopal_Church_(United_States)
https://en.wikipedia.org/wiki/John_Forbes_Nash_Jr.
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