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「ロシアのザッカーバーグ」パーヴェル・ドゥーロフの謎めいた歩み

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ウクライナ問題で注目されるテレグラム社長は謎の人物

パーヴェル・ドゥーロフ氏はテレグラム社の社長です。ロシア最大のSNSフコンタクテの創始者でもあります。
(テレグラムとは?→「なぜプーチン氏は追放されないのか?ロシアのSNSの世界」)

かつて、彼は「ロシアのザッカーバーグ」として西側メディアから持ち上げられていました。
彼がロシア政府に従わず、ロシアを出国して西側諸国を転々とするIT長者になったためです。
日本でも以下のような表現で紹介する記事が存在します。

ドゥーロフはロシアの権力者の言いなりにならないことで知られる。ウラジーミル・プーチンは彼の最大の敵だ。

プーチン最大の敵と呼ばれるロシア版ザッカーバーグ 謎のテレグラム創設者パーヴェル・ドゥーロフを捕まえろ!「世界の秘密を守る」男」(2018年)

しかし、ドゥーロフ氏は近年、少なくとも日本では、あまり話題にされなくなりました。

以下に述べるように、アメリカ・イギリス陣営からみて、彼が「味方とは言えない人物」と判断されるようになったためかもしれません。

 

ザッカーバーグなどではない。ドゥーロフ氏の5つの過去

①プーチン氏を真似したインスタ投稿でイギリスに睨まれる


プーチン氏が上半身裸になってアウトドアに勤しむ映像を目にしたことのある方は多いですね。マッチョなイメージを外部にアピールしたいためだと考えられています。

結果、このプーチン氏にあやかって上半身裸になった姿の写真をSNSにアップする流行が起こりました。多くの人が、ハッシュタグ#PutinShirtlessChallenge(シャツを着ないプーチン チャレンジ)をつけた投稿を行いました。
ドゥーロフ氏もまた、2017年に夏に、ハッシュタグ付きで写真を発表しています。

この件をイギリス公共放送局BBCが記事にしました。そして、「アメリカに対するクレムリンのタフなイメージを守るために、写真を投稿したのだろうか?」とドゥーロフ氏に対して懐疑的ともとれる言葉で結んでいます。

②過去にスティーブ・ジョブズの妻から資金提供


スティーブ・ジョブズ夫人のローレンさんは、夫の死後、アップル社の株式など莫大な資産を相続して大富豪になりました。

ドゥーロフ氏は2019年、暗号化通貨GRAMを使用したブロックチェーンビジネスを開始しようとしました。TONプロジェクトと呼ばれています。
実はこのTONプロジェクトに、ローレンさんは資金提供を行っています。しかし2020年に米国証券取引委員会はこの暗号通貨ビジネスを認めないことを決定し、ドゥーロフ氏は集めたお金を返すことになりました。

アップル社とテレグラムとトランプ氏の関係は前記事「iPhoneユーザーはトランプ氏の味方?アメリカのアップル人気の真相」に載せています。トランプ氏とロシアの繋がりは、かねてから報道されています。
(関連記事:「人工的に発病?!スティーブ・ジョブズ暗殺説」)

 

③アメリカを「警察国家」と批判

ビジネスインサイダーの記事によると、ドゥーロフ氏はアメリカを「警察国家」と批判しています。そしてサンフランシスコで携帯電話を盗まれそうになった件を語っています。

ロシア語の記事によると、ドゥーロフ氏はFBIから拘束されたことがあるそうです。またアメリカの諜報機関から協力を求める説得をされた過去も明かしています。

英語で検索した記事では見つからない情報なのが興味深いですね(私が調べた限りでですが)。

 

④シリコンバレーにも否定的

ドゥーロフ氏は、アメリカはITビジネスを行う上でベストな場所ではないとしています。
シリコンバレーで仕事したくない理由として、「プログラマーが高給でコストがかかりすぎる、甘やかされすぎている」「案件が選び放題なことで、かえって技術者が仕事に集中しない」と述べています。

とはいえ、シリコンバレーで働くIT技術者の多くは、母国を捨てて、自らの優秀さを支えに、より恵まれた生活を手に入れようとアメリカに来た人たちです。
彼らの母国への愛国心をお金で買う以上、こうした待遇にせざるを得ないのがアメリカの泣き所ですね。

ドゥーロフ氏自身の会社は母国ロシアで求人活動を行っています。

 

⑤西側諸国ではなくドバイを選択

ドゥーロフ氏はロシアを離れた後、アメリカやフィンランド、子供の頃に住んだイタリアなど、世界を転々としてきました。英連邦クリストファーネイビスやフランスの国籍も取得しています。
しかし現在はドバイに住んでいます。西側諸国ともロシアとも距離をおいた場所ですね。ウクライナとロシアの戦いが始まった後もそうです。

主な収入源はテレグラムのトップとしての報酬と思われます。
テレグラムは、ロシアにおいてもウクライナにおいても、最も影響力のあるSNSです。

年表でみるパーヴェル・ドゥーロフの歩み

以下にドゥーロフ氏の歩みを年表にしています。皆さん、どのように解釈されるでしょう?

2013年 テレグラム サービス開始
2014年 ドゥーロフ氏、ロシア政府と衝突しフコンタクテ(VK)社長を解任される。ロシアを出国し、クリストファーネイビスの市民権取得。
ロシアのパスポートは保持し続けたまま(ロシア語wikiより)
2016年 トランプ氏 大統領に選出
2017年 ドゥーロフ氏、#PutinShirtlessChallengeの写真を投稿。BBCが記事化
2018年4月 ロシア政府によりテレグラムサービス禁止(部分的には継続)
2019年 ドゥーロフ氏、暗号化通貨GRAMとTONプロジェクトを発表
2020年3月 アメリカ当局が暗号化通貨GRAMの発行を禁止
2020年5月 ドゥーロフ氏、TONプロジェクトの中止を発表
2020年6月 ロシア政府が国内でのテレグラムサービス再開許可
2020年11月 トランプ氏 大統領選で敗北
2021年4月 ドゥーロフ氏、ドバイ市民権取得(英語版wikiより)
2021年8月 ドゥーロフ氏、フランス国籍取得(ロシア語版wikiより)
2022年2月 ロシアによるウクライナ侵攻

https://ru.wikipedia.org/wiki/Gram
https://www.bbc.com/news/blogs-trending-40947813
https://svpressa.ru/persons/pavel-durov/
https://www.rbc.ru/business/05/04/2022/624bce729a7947321372c223
https://www.businessinsider.com/pavel-durov-telegram-billionaire-russia-instagram-wealth-founder-dubai-lifestyle-2022-3
https://en.wikipedia.org/wiki/Pavel_Durov
https://bitcoinist.com/steve-jobs-widow-invested-usd-5m-in-telegram-ico/

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