一般的に日本の住宅の寿命は短いとされています。
「コマツ工房」という企業のサイトによると、27年ぐらいだそうです。
築20年で資産価値がゼロに近くなるともいわれています。
一方、欧米の家屋の寿命はアメリカ103年。イギリス141年とされれています。ヨーロッパにある築三百年のホテルなども話題になりますね。
建物の寿命が長いので、彼らは子孫に家屋を残すことができます。おかげで、子供たちはメンテナンス代以外の収入を自由に使えるというわけです。
それにくらべて、日本の家では、せっかく住宅ローンを組んで購入しても、払い終わる頃には価値がなくなってしまう。そのことに納得できない人は少なくありません。
賃貸と購入、どちらが得かという議論が生まれる源もそこですね。
・・・なぜ、日本の住宅は寿命が短いのでしょう?
「日本の家は木造だけど、西洋の家は石づくりだからだ」
「日本は湿気が多く、高温だから家が傷みやすいのだ」
といった、30年以上前から国内で語り継がれてる、もっともらしい言葉をうのみにしてる方も少なくないのではと思います。
―――でも、ちょっと、よく考えてみてください。
国宝になっている正倉院は木造ですよね?1500年近く前に建造されたもののはずです。
メンテナンスを続けたとしても、千年以上前に今と比べて技術的に十分なことができたとも思えません。
今、私が住んでいる地域は京都ではありませんが、地理的に近いところです。京都のように観光客など来なくても、町屋式の古い家屋をそのまま使っている家庭がいくつもみられます。本堂が戦国時代に建てられたとされる寺もあります。
私の生まれた関東の街も町屋があるような場所ではありませんが、歴史の古い街です。そして、やはり、戦前に建てられたと思われる家屋があちこちで目につきます。
なぜ日本家屋の寿命が短いのか?この疑問に対する住宅メーカー側の回答には、戦前とは日本人の生活習慣が違うため、窓を開ける時間が少なく室内に湿気がこもりやすいせいだとするものもあります。
・・・しかし、実際には、戦後の生活になって長い現在でも、築70年を越えている家に住んでいる人たちが少なからずいるわけです。
もちろん維持費がかかるといわれる西洋の石造りの家と同じく、メンテナンスをしたりしているのかもしれませんが。
それでも、高度成長期以降に濫造された家々が30年程度で資産価値ゼロになり、その一方で歴史的価値もある戦前に建てられた家屋が使えるなら、新しいほうの家をスクラップにしたほうがいいということになるかもしれません。
日本の住宅の寿命が短くなった原因は、高度成長期以降の急激な一戸建て需要にあわせるため、日本の風土にあわない輸入材料を仕入れることが増えたことが原因とする意見もあります。その材料に合わせて工法も変えてしまい、それが今の日本では常態化しているせいでもあるといいます。
おそらく歴史と経験に基づいた技術知識に基づいて建てれば、西洋の石造りの家も、日本の木造の家も、ともに長持ちするというのが正解なのでしょう。
そして木造の家を長持ちさせることのできる技術知識こそ、日本の優位点だったでしょう。
西洋のやり方は元植民地はじめ世界中の人が触れることができる知識ですから。
現在の日本では、空き家の増加が心配されるほど、新しい住宅が日々建てられ続けています。にも関わらず、こうした日本古来の建築法を知る技術者は非常に少ないといわれています。
ツーバイフォーは知ってても、日本式の家屋の建て方は知らないし、知る必要もないと感じてる方が多いということでしょうか・・・
こうした現状に対して、
「欧米の家はすばらしい。
日本は間違った方向に進んでいる、チャチなものばかりつくって」
などと、日本を貶める消費者側の意見もよく目にします。
でも現在、販売されている日本の住宅って、多くが西洋風を意識したデザインで作られていますよね。
都心に近く、子育て世代に人気がある地域では、一つの広い場所を区分けして、似たデザインの新築住宅を複数棟、一斉に造り、販売しているケースが現在でもよくあります。
そして、そうした場所で和風なつくりの住宅って見たことがありません。
まるでフィレンツェの街中の写真から抜き出てきたみたいなデザインの家が多いです。表札までアルファベットの家も珍しくありません。和室を含む物件より、全部屋が洋間だけの物件のほうが人気があるときいたこともあります。
そもそも他アジアでは見られない一戸建て住宅の人気自体が、高度成長期に流されたアメリカドラマなどに起因する西洋文化への憧れに根差していると思われることは過去記事「戦後の日本人の原風景はアメリカドラマ」で述べました。
つまり、西洋の建築物と比べてダメだと叩かれている濫造されたチャチな家もまた、日本人の西洋文化への憧れにより生まれたわけです。
戦後70年、ずっと今の日本はダメだ、欧米を見習おうと言い続けてきた結果、
今ある日本のマイナス部分もまた、こんなふうに過去の欧米への憧れに根差しているものが多いのです。
むしろ日本文化に由来する欠点なんて、今やほとんど見られなくなってると言ってもいいぐらいでしょう。現在の日本人はアラフィフ世代でさえ、神様と聞けば、伝統的な神仏よりも、幼い頃に見たアニメの影響か白衣をまとった西洋風キャラクターが浮かんでくる人が珍しくない状態です。
日本文化を真面目に知っているのなんて、現役を引退して長い後期高齢者ぐらいでしょう。
今の若い世代を困窮させ、第三次ベビーブームを潰した原因ともいわれている派遣制度改革やリストラ、能力給制度も、もとは当時アメリカで行われていた制度を後追いして始まったのでしたね。
「年功序列とか、連帯責任といった、日本のやり方はもう古い。
先進国になったこれからは、アメリカをはじめとするほかの先進国と同じやり方に変えなくてはダメなんだ」
これらの制度が一般的になり始めた頃、マスコミが報じる知識人、または出会った管理職の人たちの口から、こうした言葉を頻繁に聞かされたものです。
その結果、日本は欧米先進国と同じように繁栄し続けるどころか、こうして失われた20年になってしまいました。今や世界はもちろんアジアでさえ、日本が一番と言える分野は少なくなっています。
何世紀にもわたる植民地支配や奴隷制度の経験を持つ欧米において、雇用、解雇が簡単な人材派遣のような制度は、基本的に異人種に白人エリートの権利を侵害させず、うまく働かせることを目的につくられました。
彼らの制度をそのまま真似ても、条件や目的がまったく違うのですから、日本の失敗は当然だったかもしれません。
でも、一般的な日本人は、なぜか真似たことが失敗だとは言いません。
むしろ欧米人と同じようにできない日本人が悪いのだという。
そして今でもアップルやamazonの創業者、北欧の教育制度などのモデルを示して、もっと欧米に近づくよう変われという・・・
「億万長者の意思決定~Amazon CEOジェフ・ベゾスは、なぜ農場から成功できたのか?」「学力世界一の国"フィンランド"と日本の教育方法の違い」 ・・・こうした記事は日本国内で非常に簡単に見つけられます。
そのくせ、シンガポールや台湾など、現在アジアで成功している国々を見て、昔の日本を真似たからだという人は少なくありません。
しかし、だったら、どうして日本人自身は、その成功パターンを自ら捨ててしまったのでしょう?
・・・なんだか、おかしいですよね。
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日本の住宅は本当に西洋の住宅より短命なのか?