「三国志」をご存知の方は多いですね。ゲームはじめ数々の関連コンテンツが販売されています。横山光輝さんの漫画の画像を使ったCMもテレビで放送されています。
この三国志の中に関羽という武将があります。関羽は山西省の出身で字は雲長。見事な鬚髯をたくわえていたため、美鬚公とよばれていました。
関羽は道教の神になっただけではない
三国時代以降、多くの皇帝は関羽を忠義の化身とし、皇室の守護神と考えました。関羽は次第に神格化され「伏魔大帝」「関聖帝君」、民間では「関公」「恩主公」とよばれるようになりました。道教の神のひとつであることは日本でも知られています。
その関羽の像が日本のあちこちのお寺に存在していることを、ご存知でしょうか?
日本の古いお寺には、伽藍神像というものが設置されているところがあります。伽藍神は寺院を守護する神で、伽藍菩薩ともよばれます。日本のwikiによると禅宗寺院ほか、真言宗の泉涌寺や覚園寺などにあり、中国風の道服を着て冠を被るものが多いとあります。
・・・その伽藍神こそが、関羽なのです。
伽藍神倚像(大龍寺)
品川区ホームページより
天台宗から始まった関羽信仰
中国宋代に書かれた書、仏祖統紀によると、592年の12月、天台宗の創始者、智顗大師が、瞑想中に関羽の霊を見るようになったといいます。
日本では天台宗というと、歴史の教科書にある平安時代の僧、最澄の名前とともに覚える方が多いでしょう。
最澄と空海は唐にわたり、それぞれ天台宗と真言宗を日本に広めたのでしたね。平安密教です。
最澄がひらいた天台宗の総本山、延暦寺はその後、さまざまな宗派の僧を世にだします。浄土宗の法然や禅宗(臨済宗)の栄西、日蓮宗の日蓮など、日本の歴史をいろどる多くの宗派の僧が天台宗の出身です。
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さて、関羽の霊が智顗大師の前にあらわれたのは、彼が関羽の遺体がおかれた場所である玉泉山に寺院を建てようとしたためでした。魔物となりさまよっていた関羽の霊は、そのことに不満をもっていました。
智顗大師は関羽に仏法を説き、関羽は心を動かされました。そして智凱大師は関羽のために仏教の五戒をさずけました。
さて、五戒とはなにでしょう?
それは仏教における在家信者が保つべききまりのことです。
以下の5つをしてはいけないと戒めています。
・殺生
・偸盗 (ちゅうとう) すなわち盗むこと
・邪淫 (じゃいん) すなわちよこしまな性関係を結ぶこと
・妄語 (もうご) すなわち嘘をつくこと
・飲酒
智凱大師の教えをうけた関羽は、仏教の守護神になったと考えられるようになります。
以降、関羽は中国の仏教界で信仰されるようになりました。そして寺をまもる伽藍神/伽藍菩薩とよばれるようになりました。
ちなみに「伽藍」とは寺門や僧侶の生活空間を含めた、寺の施設全体のことを指します。無人を意味する「がらんどう」という言葉の語源でもあります。
このように中華圏で関羽は道教、仏教の両方で聖なる存在とされ、現在でも人気を集めています。
智顗大師と関羽のエピソードは592年のことです。日本では聖徳太子が活躍した頃ですね。
wikiによると、日本の寺に伽藍神がおかれるようになったのは、その後の平安~鎌倉時代に伝わった宋代仏教の影響だとあります。日本でみられる伽藍神も関羽でまちがいないでしょう。
https://baike.baidu.com/item/%E4%BC%BD%E8%93%9D%E7%A5%9E%E5%85%B3%E5%B8%9D/12575681
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