日本の敗戦後、アメリカから輸入された映画に「風とともに去りぬ」があります。
1952年に日本で公開されたこの映画は、戦後~高度成長期を知る多くの人にとって思い出の作品です。
80年代後半、どこかは忘れましたが民放キー局がこの映画を正月特番としてゴールデンタイムにノーカット放送したこともあったほどです。
このサイトを見て下さる方は、若い方が多いようですが、親ごさんや祖父母の方に聞いてみれば、ほとんどの方がこの作品を知っていると思います。
主役のスカーレットを演じたヴィヴィアン・リーがなんといっても一番ですが、相手役のレット・バトラーを演じたクラーク・ゲーブルもそれに並んで有名です。風とともに去りぬで検索して、この二人のカットが出ないことはありませんね。
このレット役を演じたクラーク・ゲーブル。実は日本と、明るいとはいえない、けれど宿命的な縁をもつ俳優なのです。
ナチス全盛の年に世に出た「風とともに去りぬ」
「風とともに去りぬ」のアメリカでの公開は1939年。英仏とナチス・ドイツの間で戦争が始まった年でした。
その後、ナチスの前にフランスは破れ、イギリスも苦戦を強いられます。
アメリカ国内は親密な関係にあるイギリスを助け戦争に参加すべきという親英派の意見と、ヨーロッパの戦争はヨーロッパにまかせるべきという親ナチス派の意見に分裂します。
(関連記事:「進化論を信じないアメリカ人が多いのはなぜ?日本人が知らないその背景」)
そして1941年の年末、日本が真珠湾攻撃を行います。
結果、アメリカ世論は一気に戦争参加に傾きます。
親ナチス派で、戦争不参加のための活動をしていたリンドバークさえ、真珠湾攻撃を受けてアメリカ空軍への入隊を志願したそうです。断られたそうですが。
ウォルト・ディズニーも、戦争に向けた資材回収運動によせて、自宅のバンビ像を壊して提供したそうです。
アメリカ政府は戦争の資金を募るために、後に利息をつけて返すという戦時国債の発売を決定します。多くの有名人がこの戦時国債の宣伝キャンペーンに参加しました。
クラーク・ゲーブルの妻である、女優キャロル・ロンバード(下の写真)もその一人でした。
妻は最初の女性戦死者
1942年1月、キャロル・ロンバードは「戦時国債を買うことがアメリカ国民の義務」と訴え、購入者を集めるラリーを行っていました。
そしてロサンゼルス行きの飛行機に乗ったあと、帰らぬ人になります。
彼女の乗った飛行機は、ネバダ州のポトシ山と衝突し、墜落してしまったのです。
乗っていた22名は、全員死亡しました。
夜間飛行のための誘導灯は、日本軍の爆撃をおそれて消されていました。
こうした事情をかんがみ、アメリカ政府はキャロル・ロンバードを最初の女性戦死者としてみとめました。
妻キャロルの死に、ゲーブルはうちひしがれたといいます。
その後、驚いたことにゲーブルはアメリカ陸軍への入隊を志願します。
彼の入隊は、アメリカ参戦が決定した後の妻キャロルの生前の希望だったそうです。
入隊は認められました。しかし、既に有名俳優だった彼を、軍が戦場に出すことはありませんでした。彼は軍のイメージビデオのナレーターなど、宣伝関係の仕事を行いました。
・・・その後、ゲーブルは二度結婚しますが、キャロル・ロンバードと結婚していた時が最も幸福だったと述べていたそうです。
そして自身が死ぬ時も、ロンバードの傍に葬られることを希望しました。
それでも来日したクラーク・ゲーブル
このように日本を好きになる理由が全くなさそうなクラーク・ゲーブルですが、意外にも日本のwikiをみると1954年に来日しています。
まだ日本が豊かでなかった時期のことですね。バブル期以降によくみられる金銭目的のハリウッドスターの来日とは違ったものでしょう。
妻キャロル・ロンバードの望みどおりアメリカに敗北した日本。
しかしロンバードが命を失ったもとにもなった日本・・・
来日を決めたとき、そして日本の地を踏んだとき、どんな思いが彼の胸にあったのか、考えさせられますね。
・・・また日本軍のほうも、敗戦前からゲーブルの代表作である「風とともに去りぬ」という映画の豪華さにインパクトを受けていたことは、現在でも知られています。
太平洋戦争の緒戦において、日本軍による被占領地となった上海、シンガポール、マニラなどで、主に軍隊関係(陸軍中野学校出身者)の日本人がこの作品を見る機会を得たが、「こんな映画を作る国と戦争しても勝てない」と衝撃を受けたという。
クラーク・ゲーブルの子孫たち
ゲーブルとロンバードの間に子はいませんでした。しかし、彼は最後の妻との間に子をなしています。
妊娠中にゲーブルが死亡し、その後に生まれた息子です。
1960年に亡くなったゲーブル。その息子も、すでに50歳をすぎています。近年は飲酒運転容疑で逮捕されたというニュースもありました。
しかし彼の子である二人の孫たちは、共に芸能人として活躍します。
長女は女優をしていましたが、2015年に出産。ゲーブルのひ孫になる男の子が生まれています。
下の弟は有名ドキュメンタリー番組の司会をした経験があり、それに関連したネットビジネスなどを行っているようです。クラーク・ゲーブル三世と名乗っているとか。
彼らは関した記事がでるとき、いつもクラーク・ゲーブルの孫と呼ばれています。こういったところは、日本の芸能人の二世、三世と変わらないかもしれませんね。
http://www.eonline.com/news/404191/clark-gable-s-son-john-clark-gable-arrested-on-suspicion-of-dui https://en.wikipedia.org/wiki/Clark_James_Gable
http://www.dailymail.co.uk/tvshowbiz/article-2902894/Clark-Gable-s-granddaughter-Kayley-gives-birth-bouncing-baby-boy-names-iconic-star.html
https://en.wikipedia.org/wiki/Carole_Lombard
NHK BS世界のドキュメンタリー カラーでよみがえるアメリカ「1940年代」
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