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聖公会 そして日本人と交わらないアメリカ上流階級の正体

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過去記事「アメリカ人がどの社会階層なのか、ざっくり知る方法 富裕層の傾向は?」において、アメリカでは所属する宗派が信者の社会的地位とリンクしている傾向であると述べました。

キリスト教宗派の中で、もっとも高所得者の割合が高い宗派はアメリカ聖公会です。歴代大統領の1/4を出している宗派でもあります。

そして聖公会は元植民地だったアメリカが、超大国に変貌するにおいて、大きな役割を果たした宗派でもあります。

 

上流階級に多い聖公会とはどんな宗派か?その特徴

 

1.アメリカ独立に否定的だった宗派

アメリカで最も歴史ある宗派 聖公会は、初の植民地、ヴァージニア州の英国国教会から始まりました。

やがてイギリス支配への反発から、アメリカ独立戦争がおこります。

英国国教会の聖職者は、就任時に英王室に忠誠を誓っています。
独立戦争の期間も、ニューヨークなど都市部の聖職者の8割は王室派(Loyalist)でした。
彼らにとって、イギリス王室に歯向かうことになるアメリカ独立戦争は、受け入れがたいものでした。
中には閉鎖する教会もありました。

 

アメリカ独立決定後、これら植民地の教会はイギリス国教会と分離し、聖公会としてやっていくことになりました。
それでも聖公会は聖職者の教育などを通して、イギリス国教会との結びつきを重視し続けました。

独立後、ゴールドラッシュの時代を迎えるまで、ヨーロッパからアメリカへの移民は、半世紀近くに渡り激減します。聖公会もアメリカ国内でイギリス系に限らず信者を増やし、根付いていくことになります。

 

2.超大国アメリカのスタンダードを作った

1800年代、アメリカはヨーロッパ人たちから、困窮者や野心的な貧乏人の流れ着く先と見られていました。
手に負えない無法者を送りつける棄民の地でもありました。

そのアメリカを超大国にしたのは、1900年前後における工業の成功と、高い技術力を活かしてイギリスを援助した第二次世界大戦での活躍です。

下に述べるヴァンダービルトなど、もともと富裕層が目立った聖公会ですが、この時代もJPモルガン、ヘンリー・フォードといった、現代にも影響を及ぼすビジネスマンを出します。

トーマス・エジソンも、父方の家系は宗派は不明ですがアメリカ独立に否定的だった王室派(Loyalist)でした。

 

アメリカの飛躍に中心的役割を果たした聖公会

1800年代半ばに起きた南北戦争の終結後、聖公会に多かったビジネスリーダーたちとお近づきになろうと、聖公会に改宗するビジネスマンが増えたといいます。聖公会メンバーのビジネスへの姿勢が当時のアメリカ経済界に広まることになりました。

その後の1880年代から1900年代前半にかけて、アメリカは棄民の国から一気に世界一の超大国にのぼりつめるわけです。

英語版wikiは聖公会を、1900年代前半に生じた、芸術や歴史の保護に尽力するアメリカの上流文化を生んだ宗派としています。

そして1970年代、アメリカの最大手の企業の経営者の5人に一人、
最大手銀行トップの3人に一人が聖公会所属であったと載せています。

戦後昭和の日本人が思い描いた、豊かな先進国アメリカのイメージは、聖公会が作ったといっても過言ではないかもしれません。

 

3.日本人との接点は少ない

聖公会の信者が比較的高い割合で住んでいるのは
サウスカロライナ、コネチカット、ロードアイランド、ヴァージニア、そして東海岸沿いの州です。

人口数としては、ニューヨークに住む人が一番多く、20万人を超えているそうです。さすがですね。

彼らが多く住む地域と、日本人/日系人が多い西海岸やハワイは、重なりません。たとえアメリカ在住でも、普通の日本人には、なかなか縁のない存在でしょう。

 

先進国アメリカの真髄 上流階級の正体

聖公会のようなアメリカの古い宗派は、やはりアメリカに古くから根付いている家系に多くを支えられています。

アメリカ白人は初期に移住した旧移民と、ゴールドラッシュ後に移住した新移民という、二種類の移民の子孫で成り立っています。
(関連記事:「なぜアメリカの真似をする国は失敗するのか?理由は2種類の白人たち」」)

 

旧移民:植民地時代~ゴールドラッシュ前の移民
宗教や愛国心が移民理由のためヨーロッパ寄りで保守的


~アメリカ独立後、ゴールドラッシュまで半世紀ほどヨーロッパからの移民がほぼ途絶える~

新移民:ゴールドラッシュ後の移民
アメリカンドリームや貧困が移民理由のため利益重視で野心的

アメリカ富豪のうちで、圧倒的な存在感があるのは旧移民の家系です。

アメリカ国内では彼らのことを、インドのカースト制度の最上位バラモン階級(ブラーミン)に相当する存在として、ブラーミンと呼ぶこともあります
(関連記事:「ディープ・ステートはあるのか?アメリカ国民も認めるカースト制度」)

アメリカ歴代富豪トップ5のうち 4名が旧移民の家系

アメリカの著名な経済情報サイト、ビジネスインサイダー2011年に発表したアメリカ歴代富豪のうち、ベスト5は以下になります。カッコ内はその宗派です。

 

  1. ジョン・ロックフェラー(プロテスタント:北部バプテスト派)
  2. アンドリュー・カーネギー(プロテスタント:長老派)
  3. コーネリアス・ヴァンダービルト(プロテスタント:聖公会)
  4. ビル・ゲイツ(プロテスタント:会衆派教会→現在はカトリック)
  5. ジョン・アスター (プロテスタント:聖公会)

・・・この上位5名のうち、1位のロックフェラー、3位ヴァンダービルト、5位アスターはゴールドラッシュ前に移民した旧移民の家系です。
4位のビル・ゲイツも母方は旧移民の名家の血筋です。

ヴァンダービルト(Vanderbilt)とアスター(Astor)は、初めて知るという方が多いかもしれません。

ヴァンダービルト家

ヴァンダービルトは200年近く前に鉄道と海運で成功した一族です。現在もアメリカの観光名所ビルトモア・ハウスを所有しています。
日本のwikiによると現在も世界で七番目に裕福な一族だそうです。

 

アスター家

アスター家もやはり200年近く前に不動産で成功した一族です。ルーズベルト大統領の一族とも姻戚関係でした。

日本でもたまに聞くアストリアという名詞は、このアスター家が由来です。

一部は分家してイギリス貴族になっています。そのうち2名は政治家としても活躍中です。キャメロン内閣で閣僚入りしていたこともあります。

アメリカのほうは現在、イギリスの家系ほど順調ではないようですが不動産は保有し続けています。

 

 

アメリカ5大財閥のうち4つが旧移民の家系

ロックフェラー、モルガン、メロン、デュポン、カーネギーはアメリカの五大財閥といわれています。

このうち、カーネギー以外はすべて、ゴールドラッシュ前に移民してきた古い家系です。

ちなみに、これら5大財閥はすべてキリスト教系です。ユダヤ系はひとつもありません。

そして宗派こそ違え、すべてプロテスタントです。カトリックも皆無です。

 

旧移民の家系は富を維持しがち?

こうした旧移民の家系は、後から来た経済目的の新移民たちと比べると、一族が先祖からの富を維持しがちな印象です。

たとえば新移民の成功者であるディズニー家は、会社の実権をめぐって骨肉の争いが起こった末、今は一族はほとんど会社にタッチしてません。
(関連記事:「ウォルトの後は? ディズニーのお家騒動」)

一方、聖公会のヘンリー・フォードのひ孫であるウィリアム・フォードは、現在もフォードで取締役の地位にあります。

ロックフェラーも、一族は今も多くの不動産を保有する大物富豪です。
(関連記事:「ユダヤじゃない!父は犯罪者?知られざるロックフェラー家の実像」)

 

超大国アメリカの心臓 古い移民の家系

日本人は、アメリカのことを
国土が大きく、人口も多く、軍事力も先進技術もある巨人のような国だと思っていることが多いでしょう。

しかし、もともとのアメリカはヴァージニア州という小さなイギリス植民地からスタートしました。そして、400年ほどの間に膨らんでいった国です。

 

 

 

人間の体は成長して大きくなっても、脳や心臓の細胞だけは、ほとんど入れ変わらず、再生しませんね。

アメリカもまた、多くの移民を受け入れて体が大きくなっても、脳や心臓を司るのは初期のごく一部の家系なのだ・・・

そう思わせられるのが、こうしたゴールドラッシュ前の古い移民の子孫たち・・・「バラモン階級」「貴族」なアメリカ人の存在です。

 

 

南北アメリカの差とは、堅物で保守的な旧移民の存在の差?

「バラモン階級」「貴族」たちの祖先である旧移民は、アメリカに豊かさや安定を求めてやってきた人たちではありません。
信教の自由や母国の拡張を期待して、苦労を覚悟で海を渡った人々でした。

そして、彼らの子孫が中心になって、棄民の国扱いされていたアメリカを、世界一の超大国へリードした・・・。
日本のような、アメリカに憧れる国を世界に多く生じさせた・・・。

 

彼ら旧移民の子孫たちは、奇跡を起こしたといえるでしょう。素晴らしい人たちです。

 

同じく国土が広く、資源が豊富で、ヨーロッパからの経済移民が多いのに成功できなかったラテンアメリカとの決定的な違いは、
彼ら旧移民の家系という精神的支柱の存在ではないかと思います。

南北アメリカの発展の差については、一般的に「豊かな北アメリカと貧しい南アメリカ。何が明暗を分けた?」で取り上げたような、工業化や教育の成否などが理由だと指摘されています。

しかし現実には、工業化に取り組んだり、教育に力を入れても、多くの貧困国は浮かび上がれません。周辺国より高い教育を受けていたフィリピン、技術大国だったはずの日本も、なぜか衰退しつづけてますね。
(関連記事:「大卒が社会に増えるほど貧しい国になる 日本の怪」)

 

国が飛躍するためには、工業化や教育といった枝葉のノウハウだけでなく、なにか精神的に大きなものが必要なのではないかと、近代の国々の盛衰をみると思います。
(関連記事:「先進国は精神論が好き?論理的になるほど貧しくなる日本」)

 

 

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超大国アメリカでブラーミン(バラモン階級)と呼ばれる、古い移民の成功者の家系・・・。
日本人にとっては雲の上の存在です。

しかし、彼らの今後の見通しは、明るくはありません。
次記事「世界の頂点 アメリカ上流階級の憂鬱」では、彼らアメリカの「貴族/バラモン階級」の憂鬱をとりあげます。

※外部リンク「入会は極めて困難、最も排他的な9つの大学秘密社交クラブ」こうしたアメリカの貴族/バラモン階級に関した興味深い記事です。

 

https://en.wikipedia.org/wiki/Episcopal_Church_(United_States)
https://en.wikipedia.org/wiki/Thomas_Edison
https://en.wikipedia.org/wiki/Loyalist_(American_Revolution)
https://en.wikipedia.org/wiki/Expulsion_of_the_Loyalists
https://en.wikipedia.org/wiki/John_Astor,_3rd_Baron_Astor_of_Hever
https://en.wikipedia.org/wiki/Ivan_Sergeyevich_Obolensky
https://en.wikipedia.org/wiki/The_Astor_Orphan
https://en.wikipedia.org/wiki/Rockefeller_family
https://en.wikipedia.org/wiki/William_Clay_Ford_Jr.
https://isteve.blogspot.com/2009/10/episcopalians-v-jews-on-iq.html?m=1

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