日本は19世紀、欧米列強にならぶ先進国になることを目標にして、明治天皇を中心にした国家づくり、そして天皇を神に据えた国家神道を始めたというのが、多くの日本人が学んできた歴史だと思います。
ならば日本が目標にし、仲間入りを果たした「先進国」は、どのような宗教を信仰している人が多いのでしょう?
日本人はつい先進国=欧米=キリスト教と雑に考えてしまいがちですが
仏教に大乗仏教、上座部仏教、チベット仏教の違いがあるように
キリスト教にも流派があります。
さて先進国という概念にもさまざまな定義があり、GDPランキングだけでみると中国、インドのような先進国と呼ぶことに躊躇する人が多い国も含まれてしまいます。一人当たりのGDPで評価しても資源国などが入る。これも日本人としてはちょっと抵抗のある先進国の定義になってしまうでしょう。
そこで今回は、世界経済フォーラム(World Economic Forum)が発表している経済的に国際競争力のある国 2015年版のランキングを参考にしたいと思います。私たち日本人の多くが思い描く「先進国」にほぼ一致する国々が並んでいます。
順位に加えて、その国で最も信者の多い宗教を併記すると、以下のようになります。
1.スイス:カトリック
2.シンガポール:大乗仏教+中華民族信仰
3.アメリカ:プロテスタント
4.ドイツ:カトリックとプロテスタントが拮抗(29%と28%)
5.オランダ:カトリック
6.日本:大乗仏教+神道
7.香港:大乗仏教+中華民族信仰
8.フィンランド:プロテスタント
9.スゥエーデン:プロテスタント
10.イギリス:プロテスタント
スイスは宗教改革のカルヴァンのおひざ元ですからプロテスタントかと思いきや、カトリックが一番多いんですね。しかし割合としては43%対35%と両者の差は一割弱しかありません。オランダもやはりカトリックとプロテスタントの差は10%弱。
豊かで社会福祉の整った国として人気のある北欧は、どこもプロテスタントが8割近くを占め圧倒的です。このランキングにぎりぎり含まれなかった11、12位も北欧にあるノルウェー、デンマークです。
こう並べると、大乗仏教そしてプロテスタントの国の多さに気付くかと思います。
アジアで日本と並ぶほどの繁栄を遂げている国は、ネットで話題にのぼりやすい韓国含めて、大乗仏教の地域ばかりなのです。日本に仏教を伝えた中華圏がそうなのは言うまでもありません。
カトリック信者は世界のキリスト教信者全体の半数以上を占めますが、経済的に恵まれている国は欧州のいくつかの小国にしか見当たりません。
そしてEU内でもイタリア、ポルトガル、スペインといった経済危機で話題になった国ではカトリックが多く、人口の6~9割をカトリックが占めています(ギリシャはギリシャ正教系)。
これは英語圏でも共通認識になっているようで
米国版yahoo知恵袋でも
「どうしてカトリックの国々はプロテスタントの国々と比べて貧しく暴力的なの?」
(Why are Catholic countries so poor and violent compared to Protestant countries?)という質問が掲載されたりしています。検索しても、このテーマはたくさん出てきますね。
古い本ですがマックス・ウェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」という本があります。資本主義とプロテスタント信仰の相性の良さの理由を研究したものです。アジアでも、なぜ大乗仏教の国々の成功が多いのか、理由を考えてみるのも面白いかもしれませんね。
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