日本では、今の中国国内で、どのような宗教が一般的なのか、報じらることがあまりありません。
そのため、文化大革命時の寺院破壊や、法輪功への弾圧までで知識がストップしている方が多いですね。
「共産主義国家だから無宗教」と思っている方も、よく見かけます。英語圏の情報源では、そう報じてる場合も多いです。
しかし実際のところ、現在の中国政府は、国をあげて仏教を推しているといっていいでしょう。
中華圏や日本で信仰されてきた大乗仏教は、インドやタイの上座部仏教とは違うことから「中国は仏教の第二の故郷」と自称する声もあります。
国民的ドラマは天界が舞台。摩利支天が登場
上の写真は、2018年に中国で国民的大ヒットになったドラマ「香蜜沉沉烬如霜」(日本タイトル「霜花の姫」)のワンシーンです。
登場人物が伝統的な服装をしていますが、時代劇ではなくファンタジードラマです。舞台は天界ということになっています。登場人物のほとんどは仙人や精霊、そして水や火といった自然にまつわる神々です。
写真は、右手の二人(主人公とその父)が、斗姆元君にアドバイスを求める場面です。真ん中にぼんやり見える黄色いものは蓮の花です。
左側の斗姆元君は蓮座のようなものに座っています。斗姆元君は道教の神ですが、中国では摩利支天と同一視されています。
また主人公の母である花神は、釈迦如来の蓮座の蓮の花びらから生じたとされています。仏教色が強い世界観のドラマだということがわかりますね。
近年、中国では、こうした天界を舞台にしたファンタジードラマが数々制作され、人気を集めています。
時代劇にも寺や尼僧が登場
2011年に、やはり国民的大ヒットとなったドラマに「甄嬛传」(日本タイトル「宮廷の諍い女」)があります。十年後の今も話題にのぼることが多い、金字塔的な作品です。
清の雍正帝の妃たちを描いた時代劇です。そのため主な舞台は宮廷ですが、主人公が長期、寺で暮らす期間も複数回放送されます。尼僧役も数多く登場します。
上の二作にかぎらず、中国制作のドラマに、仏教関係の事物や人物が登場する割合は、日本の作品と比較すると、かなり多いと感じます。
中国では、政府が価値観をおしつけて、コンテンツにダメ出しすることが珍しくありません。政府に否定された作品は、たとえ撮影が終了し既に完成している作品でも、放送されることなく、お蔵入りになってしまいます。
ですから、これらの作品は、中国政府のお墨付きということでしょう。
中国国内に多数建立される大仏
文化大革命の時代、中国国内で無数の寺院や仏像が破壊されました。
しかし、「改革・開放」以降、中国政府はその多くを再建しています。また、自治体や財団と共に、新たな仏像も建立しています。代表的なものは以下になります。
1994年 | 広東省仏山市 | 三水大昭寺 | 石刻卧仏(108m) |
1994年 | 広東省広州市 | 蓮花山 | 青銅観音像(41m) |
1997年 | 浙江省舟山市 | 普陀山 | 南海観音銅像 (33m) |
1997年 | 江蘇省無錫市 | 祥符寺 | 霊山青銅大仏(88m) |
1998年 | 広東省仏山市 | 広東西排山 | 青銅観音像(62m) |
2004年 | 新疆烏鲁木斉市 | 紅光山大仏寺 | 西北大仏(40.8m) |
2005年 | 海南省三亜市 | 南山寺 | 南海観音 (108m) |
2006年 | 四川省楽山市 | 峨眉山 | 十方普賢菩薩像(48m) |
2007年 | 江西省九江市 | 廬山東林大仏苑 | 東林弥陀大仏(18m) |
2008年 | 河南省平頂山市 | 鲁山仏泉寺 | 中原大仏(208m) |
2008年 | 浙江省奉化市 | 溪口雪窦山 | 露天弥勒大仏(56.74m) |
2009年 | 湖南省长沙市 | 山密印寺 | 山千手千眼観音(9m) |
2009年 | 山東省烟台市 | 南山禅寺 | 南山锡青銅大仏(39m) |
2011年 | 吉林省敦化市 | 六曲山正覚寺 | 金鼎大仏(48m) |
2013年 | 安徽省池州市 | 九華山 | 地藏王菩薩巨型銅像(99m) |
2018年 | 山西省長治市 | 堂山 | 釈迦牟尼大仏(89m) |
世界最大級の釈迦像と観音像
上記の表の中でも、以下2体の大仏は世界最大の大きさです。
湖南省 鲁山佛泉寺にある世界最大の仏像。2002年から5年かけて建立された。全長208m。108人の高僧大徳が共同で開眼した仏像。近年は入場料が高額すぎて客足が減っているという声も。
海南省南山寺の観音像。1999年から6年かけて建立された。高さは人間の煩悩の数にちなんで108m。自由の女神像より15m高い。
こうした大仏建立は観光名所を生み出し、地元の活性化に結びつきます。しかし、中国政府の監督下にあり、商業性が強すぎると判断された建立計画には、許可が降りない場合もあります。中国政府としては、あくまで宗教施設として認可する姿勢です。
大都市 上海の「静安寺」では駅と寺が一体化?!
中国を代表する大都市 上海には「静安寺」という駅があります。
この駅に併設されるショッピングエリアは、隣接する静安寺寺院の建物と一体化しています。
一階がショップ、二階がお寺になっています。
静安寺はやはり文化大革命時に破壊され、その後、再建された寺の一つです。
静安寺駅は上海の中心地にあり、周辺はビルだらけです。
「都会のど真ん中の駅の真隣に、こんな寺があるなんて、日本だったら考えられない」
2019年に上海を訪れ、間近で見たときは、そう思ったものです。
平日の写真ですが、このように多くの参拝者が訪れています。入場は有料です(50元)。
拝観料等はwechat payなどの電子マネーで支払えるようになっています。
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https://m.weibo.cn/status/FEYb8li0j
https://play.tudou.com/v_show/id_XNTE3OTg1MTkwNA==.html(中山大仏)
中山大仏、静安寺以外の写真はYouTubeより