およそ200年前、西洋技術の下の武器の前に、幕府を支持する武士たちはほぼ何もできず、薩長は圧勝。そして江戸時代は終わりました。
明治になり、天皇の名のもとに多くの舶来の品や文化が日本国内に普及しだしました。
その圧倒的なこと、まるで魔法のよう。
当時の日本はドラえもんを手に入れたのび太といったところでしょうか？
欧米人の技術は凄い、西洋化は素晴らしい、まさに文明開化。
「当時のアジアの大多数の国は古臭い東洋文化にこだわり西洋化に進めなかった、けれど日本はその決断ができた」
明治維新を国の誇りと考えるひとたちは、欧米から入手した技術を手に入れて、欧米の真似を国に広めたことが、大きな手柄であったように、そう語ります。
でも、その西洋の技術って、決して簡単に生み出されたものじゃないはずです。
生み出された結果しか見なかった当時の日本人にとっては、西洋人がアジア人より優れてることを証明する魔法に見えたでしょう。しかし実際は、長年にわたる西洋人の犠牲と、努力と、研究の積み重ねの結果なのです。
中世までは鄙びた地域だったヨーロッパが世界の覇権を握る―――その第一歩がはじまったのは、大航海時代からです。
大航海・・・長期間、船に乗って、先のわからない冒険に出る。
未開の地に入っては、その土地を探検し、後世のために地図を作成し、生態系を記録する。
仲間が得体のしれない病に倒れれば、原因を探るために犠牲に耐えながら研究をすすめる。
未知の武器や毒をもっている現地の土人たちとも戦う・・・
または得体の知れない獣や昆虫に襲われたり、噛まれたり・・・
またはヨーロッパとは桁違いの高温の地域でさまよったり・・・
世界のあらゆる情報があらかじめ簡単に手に入る現在の世界旅行とは、比較にならないほど大きなリスクを負う旅です。
日本人や中国人といった黄色人は、そんな成功の保証もない冒険を命がけでするよりも、勝手のわかってる地域内で頑張る道を選ぶでしょう。今の姿を見てもわかります。
けれど白人はそのリスクを取った。しかも何百年も続けた。そして手に入れた知識や資源を自国に集約する---------発展しないはずがない。多くの犠牲はあったものの･･･
現在でさえ、豊かで不自由のない先進国に住みながら、未知の宇宙を探査したがり、エボラ出血熱等の難病の治療研究にもひるまず体あたりする彼らの命知らずの冒険心には、ただただ脱帽です。本当に遺伝子レベルの違いかもしれません。
とはいえ、彼ら白人も自分らの子孫たち、同じ民族の人々ために、より良い未来を残すことを願って冒険し、努力してきたわけです。
縁もゆかりもない、キリスト教徒ですらないアジア人のために頑張ったのではありません。
それでも、西洋人は日本に気前よく彼らの技術を教えました。明治維新期の日本の指導層の姿勢は、彼らからみると未開の国の有色人のあるべき姿だったからです。
西洋人の学問や思想を学ぶことを誇り、西洋人と同じドレスを着て踊ることを誇り、鹿鳴館を税金で建て、クリスマスのような民族の伝統と関係ない祭りを西洋人の祭りだからと祝う。
白人の配偶者を持つことに憧れ、白人は自分たちより優等な人種だと心から信じている ――こうした有色人は、当時の彼らにとって見慣れたものです。アフリカでも、南米でも、フィリピンでも、アメリカ合衆国でもね。
日本人は差別はされたけど、黒人のような奴隷扱いなんてされてない？
・・・そうです。けれど、ヨーロッパでの黒人も奴隷扱いなんてされてなかったのです。
シャーロック･ホームズにも黒人男性の人間性を評価して結婚を選んだ白人女性の話がでてきます（「黄色い顔」）。ペリーヌ物語の主人公ペリーヌも、インド女性とイギリス男性の間に生まれた肌の黒い女性とフランス男性の父親の結婚によって生まれていますね。
南アフリカやアメリカ合衆国の人種差別制度が異色だっただけで、基本的に白人は白人の文化を尊敬し従う有色人のことは、受け入れ支援していたのです。
先祖が伝えた文化を未開だと恥じて、白人になりたがり、西洋文化に染まろうとする彼らの姿は、西洋人にとって、自分たちは他の人種より優れている、キリスト教は正しいという自信を深めてくれます。
明治以降の日本は、現在の日本人にとっては脱亜入欧という言葉が表すように、アジアという泥沼から抜け出して西洋人のいる天上に進む感覚で語られます。
しかし欧米人にとっての当時の日本は、自分たちの先祖の築いた西洋文化の素晴らしさに魅せられてへりくだる、世界にたくさんある非白人地域のひとつにすぎなかったのです。
関連記事
黄色人は白人より知能が高いのに、白人が世界の覇権を握った理由
白人はアジア人を見下してる！? でも差別はあって当たり前