「シンガポール 反日感情」というキーワードで検索すると、最初のページで2件の産経新聞の記事がヒットします。
2014年2月の記事
「反日教育をやめた華人の国・シンガポール」http://www.sankei.com/world/news/140221/wor1402210021-n1.html
2015年6月
「中国の代弁者に堕ちたシンガポール」
http://www.sankei.com/world/news/150615/wor1506150003-n1.html
・・・記者が違うといえ、同じ産経でありながら、わずか1年の間に随分な変わりようですね。
2015年の記事を読むと、リー・クアンユー氏を引き継いで首相になった息子のシェンロン氏が、早々に産経新聞の期待を裏切るような言動をしていたようです。引用すると
「過去の過ちを認め、日本国民は右翼の学者・政治家の非常識な歴史歪曲をはっきりと拒否すべきだ」
反日の素地は感じていた。シェンロン氏は靖国神社を首相として参拝した小泉純一郎氏(73)に対し「日本が占領した国に悪い記憶を思い起こさせる/戦犯をあがめる対象にすべきではない」と、既に説教を垂れていた。父のリー・クアンユー初代首相(李光耀/1923~2015年)も他の多くのアジア指導者とは違い、大日本帝國による植民地解放の側面を評価しなかった。
シンガポールの反日感情について、日本のテレビは一切触れないように見えます。新聞・雑誌の報道もごくわずか。産経自体、2014年の記事では親日友好国として描いています。
そのせいか、シンガポールは親日国だと思っていたのに、現地で反日感情があると知って驚いたと述べているブログを見かけたこともあります。
初耳な人も多いと思いますが
日本軍は1942年にシンガポール華僑粛清大虐殺(The Sook Ching Massacre)と呼ばれる事件を起こしています。
私も昨年、シンガポール前首相のリー・クアンユー氏が亡くなったときのBBCの特集で初めて知りました。
リー・クアンユー氏自身、間近で起きたこの粛清を生き延びた一人であり、この当時の思い出を何度も語ってきたようです。
1942年2月、イギリス植民地軍は日本の侵略軍に取り囲まれた。リー氏はかろうじて占領期の最も酷い暴虐のひとつから逃げ出した。リー氏はのちに5万から10万の人々が殺されたと思うと述べた。イギリス軍がこの暴虐を防げなかったことはシンガポールが解放され自治すべきだという大きな証明になった。
Lee Kuan Yew: Life in pictures
http://www.bbc.com/news/world-asia-31514860
当時、リー氏が日本軍の下で働いていたことはよく知られていますが、こちらの記述をみると、それは虐殺を免れる理由にはつながらなかったようです。
リー氏は日本軍の護衛兵に隔離された中国人の一団に加わるように言われた。何か悪い予感がした彼は服を選ぶために家に戻る許しを求め、認められた。彼はのちに隔離された人々がビーチに連れていかれ撃たれたこと、それが大虐殺の一部だったことに気付いた
Lee Kuan Yew The Man And His Ideas (1998). Singapore: Times Edition.
http://www.renewamerica.com/columns/mcgrath/150327
日本ではこの事件について触れる人はほとんどいません。教科書にも載っていない。おかげで多くの人が知りません。
本来、こうした無視がシンガポールの人たちに対して失礼だと分からないほど、日本人は鈍感ではありません。
けれど、昭和の冷戦時代を知ってる方なら分かるでしょうが「日本人が反感を持つべき国」はアメリカの都合で決められています。
戦後昭和の時代はソ連、今は中国や北朝鮮を憎むように、マスコミや教育によって私たちは誘導されています。
ちょっとお角違いにも見える嫌韓の激しさについては、元来、韓国人の気質が苦手な日本人が多いという理由が大きいでしょう。しかし、それだけでなく、北朝鮮が増長して韓国を併合した場合、日本人がためらわず戦えるようにという意図もあるかもしれません。
日本人は世界最強のアメリカ軍が日本を守ってくれていると思っています。
しかし、実際のところ、アメリカ側の目からみると日本は、敵に間近い位置にいてアメリカの盾となるべき同盟国なのです。
日本の身分の不安定さは、ベトナム戦争における南ベトナムの犠牲の大きさと、その運命を知れば、簡単に想像がつくでしょう。
南ベトナム人たちも当時、世界一の軍事力を持つ超大国と同盟している自分たちが勝つと思っていたにちがいありません。今の日本のように
(アメリカを頼みに戦争した南ベトナム人の詳細→「アメリカ頼みの戦争の末路 日本人なら絶対に知っておくべきベトナム戦争」)
シンガポールthe Hong Lim Complexにある華僑粛清の記念碑
中国やロシアとちがい、シンガポールは英連邦に所属する国です。アメリカにとっては日本人を戦わせる必要のない国、協力しあってほしい国でしょう。
過去を正直に教育して日本人にシンガポールへの警戒心や敵愾心を持たせたくないと判断されてるのかもしれません。
日本が経済協力や援助/支援を通して他国に影響を及ぼせる力は年々弱まっています。ましてやシンガポールには何年も前にアジア一の先進国の座を奪われ、年々、差は開いています。
日本人が頼みにする超大国アメリカという後ろ盾も、そのアメリカが慕うイギリスと近しいシンガポールには、あまり効き目がありません。
日本人が海外に出向いて、何も知らないまま現地で無神経な言動をして誤解を招くような事態を避けるために、必要最低限の歴史は国民に伝えてほしいですね。
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