これは時代劇の撮影場面ではありません。
現代の中国で、子供向けの塾として人気を集めている国学館の一風景です。
いま、中国では多くの若者が、日本人が驚くような価値観で育てられています。
中国で人気の儒教塾 国学館とは?
国学館は中国の伝統文化を教える施設です。東洋古典、太極拳、植物、鉱物などの漢方知識、民族衣装、礼儀といった内容を学べます。
幼稚園や子供向けの私塾の形で運営されており、近年の中国で人気を集めています。
もちろん有料です。ある程度の経済水準にある家庭の保護者から支持されているということです。
国学館を運営する企業も多々存在し、フランチャイズ加盟を募集するネット広告が頻繁に見られます。
夏休みにはサマーキャンプを開催する教室も多いです。
また香港にも、国学館のほか、智勇私塾堂など、未成年に国学を教える施設があり、人気を集めています。
実際、中国の検索エンジン百度で「国学馆」を画像検索すると、各地に様々な教室があることがわかります。
<中国百度の検索結果の一部
国学館の教育内容とは?教材を紹介
国学館のひとつ、遼寧省の翰林国学館のカリキュラムは以下のようになっています。土日や放課後に通える日程になっていますね。
学年 | 教材 | 年間時間数 | 曜日 | 一回の授業時間 |
幼稚園 年中 | 千字文
弟子規 |
40 | 日曜 | 1時間 |
幼稚園 年長 | 千字文
弟子規 |
40 | 水曜 | 1時間 |
小学1年生 | 三字経
礼記 |
40 | 日曜 | 1時間半 |
小学2年生 | 唐詩、宋詩
二十四史 老子庄子 |
40 | 土曜 | 2時間 |
小学3、4年生 | 唐詩、宋詩
世説新語 論語、孟子 |
40 | 土曜 | 2時間 |
小学5、6年生 | 唐詩、宋詩
二十四史 古文観止 |
40 | 土曜 | 3時間 |
子供向けでも、教材は儒教の古典ばかり
幼稚園~小学生までのための内容ですが、教材のタイトルは今どきの日本人にはわからないものばかりですね。
南朝・梁の武帝が作らせた漢文の長詩。子供に漢字を教えたり、書の手本として使うために用いられる。1000の異なった文字が使われており、全て違った文字で、一字も重複していない。
清の乾隆帝が定めた、古代の「黄帝」から明滅亡の1644年までの正史24書のこと。二十五史ともいう。
『論語』の言葉の各句を敷衍した、中国の伝統的な教材。
伝統的な中国の学習書。暗記に便利なため、日本でも幕末に「我日本、一称和」にはじまる『本朝三字経』という書物が作られた。
後漢末から東晋までの著名人の逸話集。戦後の日本でも高度成長期の1975年に目加田誠による世説新語が出版されている。
家塾の訓蒙読本として代表的な散文選集。
これらの多くは、日本でも、江戸~戦前に高等教育を受けていた人なら、知っているだろう書物です。
中国の未来が明るく、日本の未来が暗い理由
戦後教育で育った私達の多くは、日本の過去の成功が、西欧文化によってもたらされた印象を持っています。
しかし、正確にいうと、明治~高度成長期までの日本の国際的成功を築いたのは、儒教に重点を置く戦前教育を受けた世代です。
脱亜入欧を唱えた福沢諭吉さえ漢学塾の出身でした。(>関連過去記事へ)
教育勅語の元となった幼学要項は、明治天皇のお気に入りだった儒学者によるものです。(>関連過去記事へ)
旧制中学・高校では漢学が必修科目であり、数学や国語に並ぶ主要科目でした。(>関連過去記事へ)
こうした儒教色の強い教育を受けた人々が敗戦後、安定した社会の下で高度成長期~バブル期までの繁栄を築き、日本を経済大国にします。
その後、彼ら戦前教育世代が定年退職し、戦後教育世代に日本社会をバトンタッチしたのとほぼ同じタイミングで、失われた30年が始まりました。
(関連記事:「経済大国を作った戦前世代、失われた20年の戦後世代」)
戦後の日本の成功がアメリカのおかげならば、アメリカ文化の影響をより強く受けている戦後教育世代になってからのほうが、繁栄したはずでしょう。しかし、現実は、まるで逆です。
その後の日本は、世代交代が進むごとに、同じアメリカの従属国であるフィリピンや中米諸国の状態に近づいています。
社会格差が激しく、これといった技術が乏しく、治安が悪く、薬物汚染が広まり、白人への憧れを持つ国民が非常に多いといった特徴を持つ国々です。
(関連記事:
「白人の真似ばかりの国 フィリピンは日本の未来か?」
「アメリカの属国の最終形態 中米の特徴3つ」
「メキシコ人から見た日本人。これってアメリカ依存の国の特徴?」)
成功も失敗も、原因は常に過去にある
自国の文化を未開だと見限り、欧米文化に走った国は、一時的には成功しますが、世代交代の後は、どこも泥舟のようになってしまいます。フィリピンや、ラテンアメリカの多くは、そういった国です。
(関連記事:「豊かな北アメリカと貧しい南アメリカ。何が明暗を分けた?」)
敗戦前の日本と同じような教育を若い世代に施している中国の未来は、明るいでしょう。日本を繁栄させた世代に近い精神を持つよう育てられてるのですから。
しかし、日本は現状のカリキュラムでは、いくら教育にお金をかけても、世界にたくさんある「英語がある程度使える途上国」に近くなるだけでしょう。
現代の日本の若い世代は、四書五経どころか、論語の内容すら、ほとんど知りません。
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