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「現代のローマ帝国」アメリカと敗戦国日本

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アメリカでは「アメリカ合衆国は現代のローマ帝国」という解釈が人気があります。

多くの学者や知識人がアメリカと古代ローマ帝国の歴史の類似性について学説や記事を発表しています。自著でこうした説を紹介している日本の学者もいますね。
アメリカ右派メディア大手FOX NEWSでも「アメリカはローマ帝国のように崩壊してしまうのか」などといった記事が見られます。

現代社会の多くは古代ローマの考え方にいくらか影響を受けています。しかしアメリカ合衆国に対して古代ローマが型作った影響は、特別に深いものです

「古代ローマとアメリカ合衆国間の類似」 スタンフォード大学のサイトより

アメリカ人たち自身が似ているというだけあって、確かに古代ローマ社会とアメリカ社会は似ています。

特にローマ貴族をアメリカのWASP=ゴールドラッシュ前に移住した古い家系の富裕層に当てはめて考えると、西欧文化の本質が見えてくる気がします。

 

古代ローマの「アメリカ的な」身分制度

古代ローマは身分社会でした。
住民は以下の階級に分かれていました。

貴族
------------
市民(ローマ市民権をもつ)
------------
解放奴隷(自由民)
奴隷

 

ローマの奴隷の特徴

ローマの経済活動の中心にいたのは奴隷でした。
首都ローマは奴隷だらけでした。

「奴隷」という言葉に対する日本人のイメージはよくないですね。
しかし日本人がイメージする「奴隷」とローマの奴隷は以下3つの点で違います。

裕福な奴隷もいた
自由民は身分は奴隷だけれども、解放されて労働や服従の義務がない人を指します。
彼らは富を自由に持つことができました。そのため富豪の奴隷というものも存在しました。
正式な市民権が与えられない限り、彼らは奴隷のままでした。

 

医師や教師さえ奴隷だった
日本なら「先生」をつけて呼ばれる職業である医師や教師、会計士も奴隷でした。こうした職にあるギリシャ出身の奴隷はとくに高く評価されたといいます。
身分と学識は関係なかったということですね。

 

奴隷の多くが白人だった
ローマの領土は現在のヨーロッパ中心だったため、奴隷も白人ばかりでした。外見では奴隷と市民の区別ができませんでした。

一時、奴隷と市民以上の見分けがつくように、奴隷に制服のようなものを着せる案が出たそうです。しかし、奴隷の数があまりに多く、そのことに気づいた奴隷たちが多数派であることを頼みに反乱を起こす危険性があると気づいて、取りやめになったそうです。

太古の昔から西欧文明というものは支配者と被支配者のにらみ合いの歴史なんですね。

 


youtube 「Fall Of Empires: Rome vs USA」より
 

アメリカのWASPは現代のローマ貴族

ローマの貴族は「パトリキ」といいました。
彼らは世襲であり、身分は固定されていました。市民以下との結婚を禁じていた時代もあったほど排他的な集団でした。

パトリキという言葉は、最初の元老院の議員をラテン語で「父」を意味する「パテル(Pater)」と呼んだことから生じました。
世界史の窓」によると、ローマ建国に功績のあった人の子どもたちという意味だそうです。

欧米にみられる「パトリック」「パトリシア」という名前の語源です

 

奴隷は出世すれば市民権を得ることはできましたが、パトリキになることはできませんでした。市民も同様でした。ゆえに帝政を迎えるまで、ローマでは身分闘争が繰り返されました。

 

「国家を作った人たちの子孫が貴族=支配階級になれる。」

これは前記事「ディープ・ステートはあるのか?アメリカ国民も認めるカースト制度」のボストン・ブラーミン(ボストンのバラモン階級)や聖公会に多い古い家系に代表されるアメリカのWASPもそうですね。
彼らはアメリカがまだ植民地だった時代、またはヨーロッパ人たちから見捨てられていたゴールドラッシュ以前の時代に移住してアメリカを支えた人々の子孫です。
(関連記事:「なぜアメリカの真似をする国は失敗するのか?理由は2種類の白人たち
上級国民WASPとは何か?ヒラリーさんとブッシュ氏 ケネディ家の差」)

 

アメリカはだれのもの?国家の著作権

なぜ古代ローマやアメリカは、先祖が国家に貢献した人物を特別扱いするのでしょう?

「ローマはローマという国家を作り上げた建国者のものである。組織は組織を作った人のものだ」

というのが西欧文化の考え方なのでしょう。
後から来た市民や奴隷は彼らが作った制度に乗っかって賃金や恩恵を見返りに働いただけ、というわけです。

 

「組織は、それを最初に生み出した者のものである」
この西欧の価値観は、組織を国家ではなく、ビジネスに置き換えた場合にも垣間見えます。
社員よりも会社に投資した株主が恩恵を得る「株式会社」というシステム、
作者がはるか昔の労働の報酬を延々と得ることができる「著作権」という考え方も、こうしたローマ的文化に基づいたものでしょう。

アメリカ合衆国は表向きは自由の国ということになってます。しかし実際は「ディープ・ステートはあるのか?アメリカ国民も認めるカースト制度」でとりあげたように、カーストの頂点にいるブラーミン(バラモン階級=WASP)たちのものです。
植民地だった無力なアメリカを超大国まで育てた人たちの子孫、先祖が作ったアメリカという「国家」の著作権を相続してきた彼らが現代のパトリキなのです。

そういえば実際の著作権も相続できますね。

 

一方、日本文化は禅譲という言葉にみられるように「組織は組織に属する者のもの」という考え方です。儒教の教えが元になっています。これが江戸時代の奉公文化を生み、終身雇用体制に繋がりました。
(関連記事「終身雇用制度の元祖はパナソニック!実は不況に適した制度?!」)

昭和までの日本が著作権に無頓着だったのは、未開だったからというより文化の根底が違ったゆえかもしれません。中華圏は豊かになった今も著作権を重視しませんね。

 

現代のローマ帝国と日本の立ち位置

「アメリカ=現代のローマ帝国」という説はアメリカ国内において古くからある根強いものです。
英語圏の検索エンジンでは「ancient roma usa」と入れるだけで2国の類似性や比較を取り上げた記事が大量にヒットします。

にもかかわらず、日本でこの説が紹介されることはあまりありません。
それは「アメリカ=現代のローマ帝国」とした場合の日本の立ち位置が、以下に述べるように日本人にとってあまり愉快なものでないからかもしれません。

 

古代ローマは最初はイタリアの小さな都市国家でしたが、戦争を重ね、領土を増やし、大国になりました。

ローマに負けた国はローマの一部になりました。

しかし、こうした地域はローマ本国と対等にはなれませんでした。
それらは、ローマの「属州」となりました。

属州とは、ローマの本国以外の領土を指します。

日本人の意識だと、基本的に領土=本国ですね。
しかし西欧文明においては古代からこのような、領土だけれども本国ではないというグレーの地域が存在します。
この領土というものへの認識が後の植民地拡張、帝国主義に繋がっていったともいえるでしょう

そしてローマの経済を支えた奴隷は、基本的に属州出身の民でした。奴隷獲得のために戦争をしていたという面まであるほどです。

 

アメリカもローマのように、最初はニューイングランド周辺のみの小さな植民地にすぎませんでした。それが原住民や他国と戦い、勝利して、現在のような大国になりました。

日本はアメリカに負けた側「属州」ですね。

これまで当ブログでは日本と並んでアメリカ依存の強い国として、メキシコとフィリピンを挙げてきました。
(関連記事:
世界で最もアメリカ依存の国
白人の真似ばかりの国 フィリピンは日本の未来か?」)

実は、この2国も日本と同様にアメリカと戦争して敗北した歴史を持つ国なのです。

アメリカが現代のローマなら、日本、フィリピン、メキシコは「属州」、その地に住んでいる人々は「奴隷」の身分ということになります。
(奴隷という言葉に過敏な反応を示す方もいるでしょうが、上に述べたように古代ローマにおいては知的レベルの高い層や富裕層も奴隷でした)

過去記事「アメラジアンってなに?国により違う米兵とのハーフの子の境遇」において、アメリカにとってタイや韓国とフィリピン、日本は違うカテゴリに属する国ではないかと書きましたが、その線引きの基準のひとつが、もしかしたらそこかもしれません。
タイや韓国、ラオスといったアメリカがアメラジアン受け容れを認めた国々は、アメリカに敗戦した歴史がありません。

(「韓国も当時は併合されていて日本と一緒にアメリカと戦った」と仰る方もいるかもしれませんが、英語圏側では韓国とアメリカが戦争したという認識はみられません)

 

次記事「今の日本人は日本人ではない。「現代のローマ帝国」アメリカの属州とはなにか?」ではアメリカとローマの属州の特徴についてとりあげます。

 

https://www.pbs.org/empires/romans/empire/slaves_freemen.html
https://en.wikipedia.org/wiki/Patrician_(ancient_Rome)
https://en.wikipedia.org/wiki/Slavery_in_ancient_Rome

<関連記事>
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