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少し前に「白人の真似ばかりの国 フィリピンは日本の未来か?」という記事を載せました。
・・・このタイトル、見た方は、どう思われるでしょう?
50代以上の方は「フィリピンが日本の未来?ありえない」と一笑に付す方が多いかもしれません。
若い方ほど、ドキッとしたのではないでしょうか?
記事内で引用したフィリピン人の青年の言葉
マニラの十代は開放的な心を持ち、独立心が強く、人種差別に否定的だ。LGBTコミュニティを尊重してる人もいる。髪の毛を染めるのが人気で、多くの若者が茶髪か金髪にしてる。ハリウッドや韓国ポップカルチャーの影響を受けてる。でも決して親切さや温かい心を失わない
・・・これ、今どきの日本の若者にとって、かなり身近に感じる人物像なんじゃないでしょうか?
データで知る日本の若者のフィリピン人化
「白人の真似ばかりの国 フィリピンは日本の未来か?」内でフィリピンが非常に親米的な国だという点を取り上げました
アメリカの大手調査機関ピュー・リサーチ・センターの2015年の調査によると、「アメリカが好きだ」というフィリピン人の割合は92%でしたね。
同年の調査で、日本は68%でした。あまり高くないと思われた方も多いでしょう。
・・・しかし、これを世代別に計上すると話は違ってきます。
ピュー・リサーチ・センターは2017年、ある調査の結果を発表しました。
以下は
「アメリカの思想や風俗が自国に広まることは、良いことか(It's good that American ideas and customs are spreading here)」
という問いに対して、肯定的な意見の世代格差が大きかった国々を、順にランク付けした結果です。
つまり高齢者がアメリカ文化の受け入れに否定的で、逆に若い世代が肯定的なほど、ギャップが大きく、ランクが上になるというわけです。
このランキングで、日本は一位になっています。
18歳から29歳の日本人で、アメリカ文化が自国に広がることに肯定的な人の割合は87%にのぼります。
他のランク上位の国々と比べても、突出して高いですね。
またピューは同時にもう一つ、
「アメリカの思想や風俗が自国に広まることは、良いことか、悪いことか」
を国ごとに尋ねた調査の結果も発表しています。
ソース記事を見て頂ければわかりますが、この62%という数字は、調査対象になった国々の中でトップクラスに高い数字です。
参考として韓国とカナダ、ヨーロッパの数字も載せましたが、中東でも、南米でも、アフリカでも、ここまで高い数字はありません。
また否定的な意見の割合は、日本は25%とフィリピンよりも少ないですね。
・・・この調査結果をみると、現代の日本は世界でもトップクラスにアメリカ文化に受容的な国ということになります。
その割合はフィリピンのそれに近いです。
そして、中でも若者は世代全体を通して、最もアメリカ文化の受け入れに肯定的だといえるでしょう。アメリカ企業にとって、良いお客様見込みということですねw
あるフィリピン人女性との会話の思い出
私がフィリピンという国に注目するようになったのは、スカイプ英会話でフィリピン人女性と話したことがきっかけです。
私の講師は大学に在学中だという若い女性でした。
会話の中で、フィリピンの子供はどういったキャラクターが好きかという話になりました。
彼女が挙げたのは
・ディズニー等、アメリカアニメのキャラクター
・スーパーマン、アイアンマンといったアメリカン・ヒーロー
・バービー人形
・日本の漫画、アニメキャラクター
海外発祥のものばかりですね。アメリカのものが中心です。
私は、フィリピン独自の人気キャラクターはないのかと尋ねました。
彼女は最初、私が何を言ってるのか、意味がわからないようでしたが、やがて理解して答えました。「そういったものはない」と・・・。
私は、彼女との会話に、とても衝撃を受けました。
なんだか彼女は、文化というものは、みな外国からくるものだと思っているようでした。
その後、偶然、過去記事「フィリピンの絵、日本の絵—植民地とはどんなことなのか」で取り上げたファン・ルナという画家を海外ニュースで知り、以降、フィリピンという国に興味を持つようになっていきました。
「ありえるかもしれない、日本の未来」という意味で・・・
なぜ若者は上世代よりディズニーが好きなのか?
私は20代-30代序盤の方々と定期的に話す機会があります。そこで、少し驚かされたことがあります。
ディズニーを中心としたアメリカ生まれのキャラクターが好きな人が多いのです。少ない給料をやりくりしてディズニーストアに通う人もいます。イラストを即興で描いても特徴を掴んでおり上手なものです。それも、一人や二人じゃないのです。
男性も関心が高い人が少なくありません。
若者、特に女性のこうした傾向は、私の周りだけではなく、全国的なもののようです。
ディズニーはメインターゲットとする18~29歳の女性を、YAF(young adult female)と呼ぶ。なぜYAFなのか。まず、日本ではディズニー商品の購入層は女性が多いという事情がある。中でも若い女性の購買力は高い。キャラクター商品市場では、35%が20歳以上の女性で、この購買層だけが唯一伸びている。
・・・そんな彼女らを、第二次ベビーブーム世代の私は
「ディズニー・・・お店に通うほど欲しいものかなあ?」
「ミニオン・・・これ20年前だったら、たぶん人気出なかっただろうなあ(デザイン的に)」
などと、内心思いながら眺めています。
日本における、ディズニーキャラクターの歴史は長いです。
私が幼かった1970年代には、すでに多くのキャラクターグッズや本が販売されていました。
ディズニーだけでなく、スヌーピー、ベティちゃん、スーパーマン、スパイダーマン、ポパイ、トムとジェリー、ピンクパンサー、スィーティー・・・
アメリカ生まれのキャラクターは、今よりバリエーションが多かったぐらいです。
―――ただ、昭和の子供たちは、こうしたキャラクターのことを
「嫌いなわけじゃないけど、あんまり好きじゃない」と感じる場合が多かったです。
「アメリカ(のデザイン)って、どうしてこうなんだろうね?」
と、友人と苦笑いを浮かべながら手に取った商品を、また戻す。――――そんな場面があちこちで見られた感じです。
20代30代になったあとも、私たち世代の好みは、あまり変わらなかった記憶です。
1970年代を知る世代は、今でもデザインそのものなら、ディズニーより、ハローキティのような国産キャラクターのほうが好きという人が多数派ではないかと思います。
アメリカン・デザインへの抵抗感がキティを生んだ?
「アメリカ(のデザイン)って、どうしてこうなんだろうね?」
・・・私たち世代が感じる、この違和感、抵抗感を説明するのは難しいです。
ただ、
「どうしてこうなんだろう(求めてるものと、違うんだよなあ)」
といえるということは、
「これではない、別の好きなもの」のイメージが、私たち世代の中には、何となくあるということなのでしょう。
今にして思うと、昭和の時代に巷にあふれたアメリカのキャラクターに対する「これじゃない」感が、1974年のハローキティ誕生につながったのかもしれません。
ハローキティは、当時からスヌーピーグッズを販売していたサンリオが、スヌーピーに対抗して自社オリジナルキャラクターを開発しようと生み出したキャラクターの一つである
wikiより
キティは今ではアジアはもちろん、欧米でも人気の、日本が誇るビッグブランドですね。
サンリオの始めたことは、当時の日本では画期的なビジネスでした。
・・・でも、今の若い人たちは昭和の日本人と違って、ディズニーなどアメリカ式のデザインに抵抗を感じないようです・・・
もしかしたら、フィリピン人のように、アメリカ風の文化や美感覚が、自分たちのもののようになってしまっているのではないでしょうか?
幼い頃から、上世代以上に、欧米文化のコピーや欧米風なデザインに囲まれて育ったことを考えれば、不思議はありません・・・
そして、ジュースが薄められていくように、上世代よりも日本的な感性が乏しくなっている可能性があるでしょう。
異文化への抵抗感を失った先にあるのは・・・
欧米センスの下で生まれたサービスに対する
「私達のほしいものは、こういうものじゃない」
といった日本人の抵抗感が、
「欧米が発明したものに、工夫を加えることが得意」といわれた、昭和の日本人の発想力の源だったかもしれません。
そして平成になって、IT時代を迎えたあとも、欧米にはないタイプの匿名掲示板2ちゃんねる(現在は5ちゃんねる)を作ったり、mixiを作ったりという形に進んでいったともいえます。
・・・でも、そういう抵抗感を持たない世代の人たちは、欧米生まれのサービスにあらがうことなく、そのまま乗っかっていくでしょう。フィリピン人のように。
実際、1970年代生まれによるmixiや2ちゃんねるを最後に、日本生まれの独自なサービスはあまり聞かなくなりました。
現在、若者の間でメジャーなネットサービスは、だいたいがアメリカ生まれのものですね。Facebookとかインスタグラムとか。LINEは韓国のものですが。
フィリピンもSNS人口は多いですが、quoraによると、メジャーなアプリはやはり、日本と同じくアメリカ製を筆頭に海外製ばかりです。
若者ベンチャーとして注目されるメルカリも、気づいてる方は多いと思いますが、アメリカに以前からあるビジネスモデルをローカライズしたものですね。それに、嫌な言葉ですが、近年の日本における貧困ビジネスが結びついて、成功したといえるでしょう
(なのに経営陣がアメリカ進出を謳う真意は何なんでしょうね?)
外国人が考えたサービスを、ただ選択し、利用するだけの人々。
それは外国文化の追随者であり、永遠の消費者です。
常にユーザー側であって、供給する側にはなれない。
フィリピンも長年にわたって、自国に入ってくる海外文化のユーザー側の国でした。
とても西欧的で親米的ですが、独自のものはわずかです。
アジアで最も英語が上手ですが、その英語を活かした結果、世界有数の出稼ぎメイドの供給国になってるのもフィリピンです。
メイドの供給国はフィリピンの他はアフリカの国々が多いです。そういう仕事です。
中には、現地の雇い主から非人道的な扱いを受けるケースもあるといいます。
そして、母国はいつまでも貧しい。
(参考:「BS世界のドキュメンタリー「メイド地獄」」)
英語ができる。積極的である。グローバル化に適応できる。学歴社会である。欧米先進国の文化をよく学び、受け入れている。
・・・それだけでは、豊かにはなれないのだと、フィリピンは示しています。
日本らしさを覚えてる世代のすべきこと
日本は今はまだ、上世代が築いたブランドを焼き直ししたり、ハッタリに利用したり、切り売りすることで、かろうじて先進国の地位を保っています。
しかし、その遺産もやがて尽きたとき、「ユーザーにしかなれない」人たちはどうなるのでしょう?
ハローキティだって、30年後、50年後も世界に愛され続け、日本経済の助けになってくれるとは限りません。
1950年代には一人あたりGDPが世界で34位だったフィリピン。現在は131位です。
1970年代頃に韓国、台湾に抜かれたのを皮切りに、半世紀もしない間に、タイに抜かれ、中国に抜かれ、ついにはインドネシアに抜かれ、底が抜けたように転落していきました・・・。
近年、注目を集めている日本の若者文化に、ハロウィンがありますね・・・。
私が今まで知る若者文化で、これほど暗澹とした気持ちにさせられたものはないです。
日本の若者による新しいビジネスや、新しい流行が、上世代の若い頃と比べて、次第に少なく貧弱になっていることは、かなり前から気になっていました。
それでも、ヤマンバギャルも、成人式の大騒ぎも、どんなに馬鹿にされても、当時の日本の若者が自分たちで考えたことでした。
でも、とうとう、外国人がやってることを真似るだけになってしまった・・・
こんなこと、戦後の日本で、初めてではないでしょうか?
これから、どうしたらいいのか・・・。
それは若者以上に、本来の日本がどうだったかを覚えている、私たち上の世代の課題だと思います。
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余談ですがハローキティをデザインした清水侑子さん、現在72歳になられてるんですね。キティの誕生日が11月1日に設定されてるのは、彼女の誕生日だからなのでしょう。
世界におけるキティの人気ぶり、日本経済への貢献、キティによる日本のイメージ向上を考えると、彼女は国民栄誉賞をもらってもいいんじゃないかと思うぐらいです。
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