前記事「バブル期に日本は何をしくじった?~孤独なコスモポリタン」でバブル期に起きた欧米への留学、移住ブームを取り上げました。
実際、現在アメリカで生活してる日本人のブログなどを見ると、バブル期~90年代に渡米したという人がとても多いです。
グリーンカードを取得して永住権を得た人も多いようですね。
ただ、日本で暮らしてた頃より生活水準が上がった人はあまりいないようですが・・・
留学ブームと共に訪れた英会話ブーム
さて、留学には英会話力が必須です。バブル期には老舗ECCはじめ、あちこちに英会話教室が乱立しました。当時はまだスカイプ英会話なんてありませんでしたからね。
特に駅前留学のNOVAはCMが成功し、爆発的な人気と知名度を獲得しました。名門の中高一貫私立を出てマーチクラスの大学を卒業した知り合いのお嬢さんさえ、就職先に選んだ会社です。
検索してみたところ、バブル期に成功したNOVAは2007年に経営破たんし、今は違う団体が運営しているそうです。こんなところにも失われた20年が><;;
当時の英会話教室の外国人講師は、ほとんどが白人でした。
しかし今時のスカイプ英会話教室だと、講師は多くがフィリピン人です。
バブル期にフィリピン人やシンガポール人を招いてれば、ずっと安上がりで、そのぶん多くの人が英語に馴染めたのでは?と今の若い方は思われるかもしれません。
クィーンズ・イングリッシュ
なぜバブル期の日本人は欧米人、特に白人から英語を教わることにこだわったのでしょう?
実は当時、以下のような通念が日本国内で広まっていました。
”・・・欧米では階級によって喋る英語が違う。一番学ぶべきスタンダードな英語は上流階級も使うイギリス式のクィーンズ・イングリッシュである。ビジネス向きにはアメリカ英語も悪くない。しかしシングリッシュと揶揄されるシンガポールの英語やフィリピン英語など、欧米の元植民地で使われる英語は、欧米人から下にみられる英語なので学ぶべきではない・・・”
クィーンズ・イングリッシュで検索してみると、今もこれに憧れてる日本人は多いようですね。
若かった当時の私も、そういうものなんだと深く考えることもなくクィーンズ・イングリッシュ信仰を受け止めていました。
でも、今にして思うと・・・外国人である日本人がクィーンズ・イングリッシュって・・・
たとえば日本の謙譲語、尊敬語など複雑な言葉づかいや、伝統的な礼儀作法を完璧にこなせるイギリス人なり、フィリピン人なりがいたとします。
そうした外国人に対して、私達日本人は彼らが日本文化に興味を持ってくれたことを感謝はするでしょう。
でも、それを習得するために彼らがした努力を、あくまで趣味の一環ととらえると思います。
だって、私達が外国人に一番期待してることって、そういうことじゃないですよね。
外国人に期待されてるのは、彼ら独自の文化を私達に教えてくれることです。それは、どこの国においても同じです。
欧米人にしてみれば、クィーンズ・イングリッシュができる西洋文化に詳しい日本人より、アジア的な英語しかできないけど日本文化に詳しい日本人のほうが、ずっとありがたかったでしょう。
・・・そして、実際、シングリッシュを国内に広めたシンガポールのほうが、その後、日本より繁栄することになりました。
(関連記事:「不景気しか知らない世代こそ見てほしい 日本に勝った先進国シンガポール」)
フィリピンは廉価な英語教育サービスを提供することでアジア各地の英語学習者をひきつけ、英語教育産業で成功しています。もちろん彼らの英語はクィーンズなんかじゃないです。
一方、90年代までクィーンズだのアメリカ式だのにこだわり続けた日本の英語力は現在、アジアでほぼ最下位といわれています。
(参考記事:アジアで最下位!なぜ日本は「英語が話せない」国なのか? ダイヤモンド社)
日本人の、こうした木を見て森を見ないところは、今も昔も変わらぬ特性かもしれません。
日本女性はなぜ大和撫子からイエローキャブになったのか
昭和の頃からずっと日本では
「外国人の恋人を持つことが英語が上達する最良の手段」
という通念が、一般的に広まっていました。
今もこれを口にする人は珍しくありません。
当時は私も、みんなが言ってるし、そのとおりなのだろうと納得して聞いていたものですが・・・アメリカ人の友人もでき、欧米のことをいろいろ知るようになってくると・・・実はとんでもない話です。
語学スキル獲得のために外国人と関係するって・・・
こんなこと、真面目に言ったら欧米人から軽蔑されてしまいます。
―――なぜ、こんな破廉恥なことが日本では「当たり前」として語られてきたのでしょうか・・・
もしかしたら、戦後、進駐軍への売春で身を立てていた女性たちが英語に堪能だった過去を見た世代の影響かもしれません。
当時の日本は、こうした形でまだ戦後を引きずっていたのかもしれませんね。
英語習得を望む若い女性たちは、こうした「上達方法」を信じ、欧米人男性の接近を積極的に受け入れました。
知り合った相手と、すぐに性交渉することも、欧米文化らしくてかっこいいと考える人も少なくありませんでした。
アメリカ人は、いろいろな人と付き合ったり同棲したりして、自分に合う人を確かめてから結婚するのだという話を、よく聞いたものです。
当時を知る人に、バブル期の女子学生の援助交際がアメリカのニュースで非難されていたという話をすると、驚かれることがあります。
それもそのはず。だって、日本人はそうした軽さはアメリカから来たものと信じてきたのですから。
日本に広まった「アメリカ人は簡単に性交渉をする」という認識が、アメリカ人と付き合った過去のある日本人からもたらされたものなのか、流行したアメリカドラマなどから来たものなのかは、わかりません・・・
当時、アメリカ人の間で「白人でさえあれば、簡単に稼げる仕事」として、日本に渡り英会話教室の講師になることが、人気を呼んだそうです。
この仕事の美味しい点として、女生徒と簡単にそういう関係になれるというのも挙げられていたとか・・・
こうした背景のもと、欧米人たちの間で、日本人女性はイエローキャブ(タクシーを捕まえるように簡単に一晩をすごせる女性)と呼ばれるようになっていきました。
欧米人と付き合いたがった当時の日本人女性には、外国語がうまくなりたいという願望が必ずといっていいほどありました。
彼女たちは向上心があったのに、日本社会から歪んだ手段と偏った情報を教えられていた・・・。
それを信じて実行したことが、後に日本人が軽んじられる原因になってしまったとしたら、皮肉な話ですね。
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