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日本人はヤペテの子孫?白人も白熱する「ノアの子孫」論争

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旧約聖書にある、ノアの箱舟の話は日本でも有名ですね。
ノアには三人の息子がいました。セム、ハム、ヤペテ・・・この三人も、箱舟に乗って助かった者たちです。

キリスト教、ユダヤ教では、この世の人類のすべては、このノアの三人の息子たちの子孫だとされています。

そして、どの民族が、どの息子の子孫かということが、古くから議論されてきました。

 

ノアの子孫はどの民族か?1000年以上も続く研究

旧約聖書の創世記11章で、ユダヤ民族の祖アブラハムがセムの子孫であることは確定しています。

そしてヨーロッパ人はヤペテの子孫、アフリカ人はハムの子孫であると、中世からずっと長いこと、考えられてきました。

日本でもグーグルで検索すると、セムはアジア人の先祖だとか、ヤペテは白人の先祖だとか出てきますね。

15世紀ごろまで、ヨーロッパではキリスト教的世界観に基づいたT-Oマップというものがよく知られていました。
まだ世界地図を作製する知識や技術がなかった時代の地図です。

 

T-O

T-O マップ(英語版wiki 7世紀ごろに書かれたと思われる本より)

図をみると、なぜT-Oなのかよくわかりますね。Oが地球であり、ノアの三兄弟の土地がTによって分割されているのです。
アジアはおおざっぱにセム(sem)と書かれてます。

当時のヨーロッパ人の世界観は、こんな感じだったんでしょうね。

 

T-Oマップが作成された時代のヨーロッパでは、私たち東洋人を目にすることなく一生を終える人がほとんどでした。
彼らはギリシャのことさえオリエント(東方)と呼んでいたほどです。

中東の民であるユダヤ人がセムの子孫、アフリカ人がハムの子孫ならば、当時のヨーロッパ人たちが自分たちをヤペテの子孫と考えるのももっともかもしれません。

 

「黄色人は誰の子孫か?」欧米キリスト教界の論争

その後、大航海時代になり、ヨーロッパ人たちは中華文化圏と東洋人を、より身近に知るようになります。

さて、セムの子孫がユダヤであり、ヨーロッパ人をヤペテにあてはめようとすると、それでは中華系の民はどの子孫になるでしょう?

ヨーロッパ人=ヤペテの子孫説を信じる欧米のキリスト教徒たちは、中国古代の伝説から彼らはセムの子孫だろうとか、ハムの子孫の傍流だろうとか、いろいろな説を考えます。
(参考記事:「孔子の正体はモーセ?中国人はノアの子孫?近世ヨーロッパの中国観 」)

・・・要するに、わからなかったのです。

 

そして20年ほど前、アメリカ福音派の著名な牧師、アーネスト・L・マーティン氏がある大胆な自説を発表します。

「ヤぺテという名前の由来は"拡張"という意味である。よって、地球上でもっとも人口を多く”拡張”させた黄色人こそ、ヤペテの子孫だ」

ちなみに日本語のサイト、キリスト教よみもの 民族の起源というページにも、中国の少数民族の伝承から、モンゴロイドがヤペテの子ゴメルを祖とするヤペテの子孫ではないかという説が載っています。

しかし、この説に対しては、同じキリスト教徒から、強い反論が噴出しました。

・・・さて、日本人なら、ここまで読んだものの、こんな議論、知ったところで、どっちでもいいと思ってしまう人がほとんどでしょう。
私たち東アジア人の多くは、聖書への知識があまりありません。

けれど、この私たちの無関心さこそ、下に述べるキリスト教徒たちを白熱させてしまう理由のひとつかもしれないのです。
それほど、この説には、不思議な説得力があるのです。

 

ヤペテの子孫は黄色人?!白人がセムの子孫?

以下は、旧約聖書にある、ノアが自分の子孫たちの運命を予言したとされる部分です。

セムの神、主はほむべきかな
カナン(ハムの息子)はそのしもべとなれ
神はヤペテを大いならしめ
セムの天幕に彼を住まわせられるように
カナンはそのしもべとなれ(創世記 9章)

 

この引用文からすると神に大いならしめられるヤペテは、三兄弟で最も祝福された者かもしれませんね―――。
それがモンゴロイドだなんて・・・欧米キリスト教徒たちがむきになるのも、不思議はありません。

もっとも、反論されたマーティン氏も写真からすると、白人なのですが。

アーネスト・L・マーティン
(http://www.truefreethinker.com より)

さて、マーティン氏の説は、どのような説得力があるのでしょう?

 

一神教信仰はセムの子孫の特徴?

上記のノアの言葉の引用の中には、興味深い一文があります。

>セムの神、主はほむべきかな

引用元は旧約聖書ですから、主とはもちろんキリスト教とユダヤ教の神、ヤハウェ(エホバ)のことです。
そしてイスラム教の神、アッラーでもあります。
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の三つの一神教が、実際は同じ神を信仰していることは、よく知られていますね。
(イスラム教もユダヤから生まれた?→「なぜ争う?キリスト教の神とイスラム教のアッラーは同じ神」)

そして、これら三つの宗教は、欧米~中東に至るコーカソイド人種の間で、先祖代々信仰されてきた宗教です。

 

わたしたち東アジアのモンゴロイドは、違う宗教ですね。

なぜ東アジア人は欧米文化に憧れても、キリスト教に改宗する人が少ないのか、欧米人のほうが首をかしげているほどです。

そして主は、セムの神なのです。ヤペテではなく、セムの神。
セムの子孫だけが、ヤハウェのメッセンジャーを務めることができるとされています。

つまり、
人類の三つの人種、コーカソイド(白人)、ネグロイド(黒人)、モンゴロイド(黄色人)をセム、ハム、ヤペテにあてはめると、すっきりまとまるのです。

 

帝国主義と植民地化により広がった「天幕」

モンゴロイドではなく、ヨーロッパ人こそがヤペテの子孫であると主張する人たちは、植民地時代に領土を"拡張"したことがヤペテの子孫である証だとしています。

確かに、ヨーロッパ系人種は現在、地球上の広い領土を支配していますね。

そして、その点に関しても、また先ほどの引用に興味深い一行があります。

>セムの天幕に彼(ヤペテ)を住まわせられるように

・・もし、手元に地球儀がある方は見てみてください。

上部、北極側には、ロシア、アラスカ、ヨーロッパ、デンマーク領グリーンランドといったコーカソイド人種が支配している土地が隙間なく連なっています。まるでテント(天幕)の屋根のように・・・

 

人知を超えた人種と宗教の意味

わたしたち東アジア人・・・モンゴロイドとは何者なのでしょう?
世界各地で華僑はユダヤ人に負けないネットワークを持ち、
日本含む東アジアの国による発明品、工業品もまた世界を席捲しています。
領土ではなく、民族に注目して考えてみると、なかなか面白いですね。

一方、コーカソイド人種にもインド人という、一神教でない独自の宗教(ヒンドゥー教
)を主に信仰している民族もいます。

世界にある神道に似ている宗教と、その民
日本人に西洋穢多とまで呼ばれたヨーロッパの不可触民、ロマ族をどこまで知ってる?
といった過去記事で触れた内容を思い返すと、コーカソイド人種の中のインド人の立ち位置の謎について、少し考えさせられます。

 

追記:アーネスト・L・マーテインは黄色人がヤペテの子孫である理由を人口の多さとしています。
たしかに19世紀までに行われた調査ではモンゴロイドが世界で最も人口の多い民でした。
20世紀に教育を受けた方の多くが、そう教わったかと思います。
しかし英語版wikiによると、94年の調査の結果、どのような基準でかはわかりませんが、世界の人口の56%はコーカソイドであるとされています。
20世紀に東~東南アジアで戦争が続いたこと、中国の一人っ子政策、インドの人口増加が理由かもしれません。
逆転の立役者と思われるインド人はコーカソイドには珍しく一神教を信仰しない民です。
・・・これが何を意味するのか、なんだか興味深いですね。

 

 

http://www.askelm.com/prophecy/p950701.htm
https://hubpages.com/religion-philosophy/Part-2-Biblical-Origin-of-Chinese-People
https://sites.google.com/site/japethdescendants/

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