ピュー・リサーチ・センターはアメリカの有名な調査会社です。
安倍政権が発足してまもなく、中国包囲網が話題になった頃、東南アジアおよび世界各国の日本への好感度調査の結果がよく話題になりましたね。あの調査を行ったのがピューです。
そのピュー・リサーチ・センターが昨年2016年に日本人の意識調査を行った結果をレポートにして公開しています。
ピューのレポートは知識層さえもがこれが日本の実態だと思ってしまうほど、英語圏で信頼されているものです。他の英語コンテンツに引用されることもとても多いです。
その抜粋を紹介します。
日本マスコミを通してみる日本像とは違うものが見えてくるかもしれません。
長い落胆の旅と評される日本経済
このレポートはまず、日本の経済状態に対して、アメリカ側の視点での見解を述べています。
日本経済は1980年代後半の弾むような経済成長の時期を最後に、長い落胆の旅が続いている。世界銀行によると、1990年からの経済成長率は平均して1.08%である
経済が良い状態にあると考えている一般人は30%のみであり、68%の人は現在の経済状態は悪いと考えている。物事が良い状態にあると考えてる人は2015年と比べて7%減少した。
しかし、こうした悲観論は長い目で見るべきあり、2012年には経済状態が上向いていると考える人は7パーセントしかいなかった
レポートによると2016年、国内の状況に満足している日本人は47%、不満足な人は45%だそうです。2014年の34%から大きくアップしているとあります。
そして、これはピュー・リサーチ・センターがこの調査を日本で始めた2002年以降で最大の数字だそうです―――
・・・ホントかなあ??日本人の一人としてはちょっと信じられませんね。一般人からみると2002年頃のほうが社会全体に余裕があったような?
でも、東日本大震災の頃の暗い状況と較べたら、確かに満足できる状態に近くなったかもしれません。
また日本人の61%が経済的な世界のリーダーはアメリカと答え、24%が中国だと答えたそうです。
アメリカと答える人が多いのは当然でしょうが、中国と答える人が24%もいるって、ちょっと驚きの数字ですね。
日本人は途上国への援助が好き?
レポートによると、日本人の10人中、6人が日本は問題を抱える他の国々を助けるべきだと答えているそうです。
日本は自国の問題に取り組むべきであり、他国の問題は他国にまかせるべきと考える人は、わずか35%だそうです。
・・・近年は子供の貧困、若年層の低賃金が社会問題になっている日本。
それが途上国を助けるなんて――そんな余裕、あるのかな?って、思ってしまう方も少なくないかもしれません。
しかし、このレポートが述べる、日本人が希望する援助方法として人気なものを知ると、日本の援助好きも納得です。
一番人気がある方法は、日本企業が途上国への投資を行うこと(73%)
これ、要は日本企業の市場開拓ですね。
二番目がアジアやアフリカ、南米の途上国から物品を輸入すること(71%)
これもなるべく安い品を入手したいということ。日本人、ちゃっかりしてますw
三番目が海外への援助活動で66%、これは男性の支持が77%に対し、女性の支持は58%だそうです。
ちなみに日本は国の収入総額の0.22%を海外援助活動のために支出しているそうです。
アメリカは0.17%、イギリスは0.71%だそうです。
日本人が考える日本人の定義
このレポートは日本人は日本人としてある上で、何が一番重要と考えるかという調査も行っています。ちょっと普通の日本人としてはピンとこない、アメリカの調査機関ならではの調査内容かもしれませんね。
・日本人が考える日本人である上で最も重要なポイントとは?
1.日本語が喋れること(70%)
2.日本で生まれたこと(50%)
3.日本の慣習と伝統を共有すること(43%)
主に、この3つだそうです。
皆さん、どうお考えでしょう?
・・・個人的には、日本人の血統であることが日本人の定義と考える日本人が多いような気がします。
でも他民族国家アメリカの調査機関としては、それは触れてはいけないことなのかもしれないですね。
日本人が考える日本にとっての脅威とは?
日本人が自国への脅威と考えることを調査したところ、結果は以下のようになったそうです。数値からして複数回答のようですね。
- 他国からのサイバーアタック(71%)
- ISIS(69%)
- 世界的な気候変動(68%)
- 中国の世界への影響力の増大(63%)
- 世界的な経済不安定(59%)
- アメリカの力と影響力(52%)
- シリア難民問題(39%)
- ロシアとの緊張関係(33%)
アメリカに好感情を持つ人が多い国にもかかわらず、52%の人がアメリカを脅威と感じていることにレポートは注目しています。
特に18-34歳の若い日本人の63%がアメリカを脅威とみているそうです。この数字が50歳以上の数字である47%より高いことも注意点とされています。
また国内の根強い反中感情にもかかわらず、中国を脅威と感じる日本人の割合が63%という結果を、ピューリサーチとしては少なく感じているようです。
日本人からみた軍事活動
レポートによると、日本人の79%が軍事力に頼りすぎることは、より多くのテロリズムを生むと答えています。
圧倒的な軍事力がテロリズムを打ち負かす最良の方法と考える人は14%しかいないそうです。
また国費のおよそ1%である防衛費を増加すべきと考えている日本人はわずか29%しかいないと、このレポートは少し驚きを込めて述べています。
日本のマスコミ報道やネットの書き込みなどを見ていると、軍事的な役割の増加に賛成する日本人が多数派のような印象を持ってしまいます。
けれど、このレポートから見えてくる日本人の意識はまるで悟った人のように厭戦的です。
一体どちらの姿が本当なんでしょうかね・・・
それでも、日本はアジアでより積極的な軍事活動をすべきという意見は、2015年の23%から29パーセントに増加したそうです。
一方、日本の軍事的な役割は限定的であるべきという意見は68%から62%に減少しました。
際立つオバマ氏への好感度
前大統領のオバマ氏のことを、世界情勢に対して正しいことをする人物と評価する日本人は78%にのぼります。
オバマ氏の任期中、一貫して日本人は強い支持を示してきたとレポートは述べています。
また、この調査は大統領選の結果が判明する前の2016年に行われていますが、当時、70%以上の日本人が次期大統領としてヒラリー氏を支持していたそうです。この結果は彼女が2008年にオバマ氏と争ったときの支持率48%を大幅に上回る数字だとか。
一方、トランプ氏が世界情勢に対して正しいことをすると考える日本人は9%しかおらず、82%が彼に対して不支持だとレポートは述べています。
増大する中国への敵対感情
日本人の86%が中国に対して反感をもっており、そのうち42パーセントは非常に激しい敵対心を持っているとされています。
一方、好意的な人は10%程度、
習近平氏を信頼できると答えた人も、それとほぼ同じ12%です。
また8人に一人が国境をめぐる問題が、いずれ軍事的な衝突につながると考えているとされています。
・・・このあたりは国内マスコミの報道とほぼ同じですね。
こうした国民感情を利用して商売にしている人も少なくないぐらいですし。
なんにせよ、英語圏で有名な調査機関が世界に広めてる日本人像は、このようなものです。
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